「唯一無二の表現の豊かさよ」レッドタートル ある島の物語 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
唯一無二の表現の豊かさよ
短編「岸辺のふたり」があまりにも感動的だったので、長編になるとどんなすごいことにならのかという短絡的な考えはいい意味で裏切られた。
短編な尺である親子の人生を描ききってしまった「岸辺のふたり」から、とんでもない飛躍を遂げているわけではない。むしろ舞台は大きく広がっても、物語のサイズは変わっていない。
ただ、一瞬一瞬の描写の緻密さと繊細さ、それでいて大胆な挑戦の数々に魅了されるばかり。
無人島で形成されるシュールな家族の物語を深く解釈しようとは思わない。ただ、目の前に展開するひとの、自然の、そしてカメの営みを見つめているだけで、なんとも贅沢な時間を味わうことができるのだ。
ジブリ製作とはいえ実作業はヨーロッパで行われたようだが、「ポニョ以降」を感じさせる波の表現だけでも、ジブリの功績を推し進めた継承者として激賞されるに価すると思う。
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