コンカッションのレビュー・感想・評価
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テンポがいい作品、見ていて飽きない 作中何度も出てきたウィルスミス...
真実の追究は、命懸けだ。
不寛容の国アメリカ
ハリウッド映画で主演がウィル・スミスとなれば、シネコンをはじめとしてたくさんの映画館での上映となるのが通例だが、この映画は東京では2館だけ、全国でも20館の上映に限られていて、たとえば角川シネマ新宿では10月29日から11月11日までのわずか2週間の上映だった。勿論いくらNFLでも日本の映画配給会社までは影響を及ぼせはしないと思うので、配給会社独自の考え方だろうが、もう少し多くの映画館で、もう少し長い期間上映してもいいのではないかと、この映画を観た人は思うだろう。
アメリカの国家「星条旗」に、「自由の国、勇気の故郷に星条旗がはためいているのだ」という歌詞がある。我々はアメリカは自由の国だというイメージを持っているが、実はそうでもない。それは今回の大統領選のその後を見てもわかる。
自由とは、互いに相手の自由を認め合うことで保障される。要するに互に寛容でなければ互いの自由はないのだ。大統領選について言えば、話し合いの結果で成立した選挙制度を認め、結果を受け入れることができないと、自由は保障されない。ところが、トランプ大統領を認めないとして抗議したり官憲に暴力を振るったりする人たちの映像が毎日報道されている。アメリカは不寛容の国で、不寛容の国に自由はないのだ。
不寛容は同調圧力を生み、差別を生み、格差を作り出す。アメリカ人の多くが愛するスポーツが選手の病気を生み出し、引退後の不幸を生み出す原因と指摘されれば、そんな主張には大反対し、主張する人間を非難し排斥し、またはFBIなどの権力を使って実力行使をする。日本の警察もそうだが、権力が個人の自由を奪うのは簡単だ。あることないことでっち上げて、違法行為を犯したことにすればいい。逮捕して密室で供述調書を取れば、死刑にしなくても社会的に抹殺される。
ウィル・スミス演じるナイジェリア出身の医師は、アメリカに憧れてアメリカ人になりたいとさえ思っていたが、未発見の症例を発表したことでアメリカの不寛容を思い知ることになる。その不寛容にはうっすらと黒人差別の感情も入り混じっているようだ。
ウィル・スミスは「インディペンデンスデイ」の典型的なアメリカ人兵士の役から20年を経て、この映画では誠実と思いやりと寛容さを持つ深い人間性を表現している。ナタリー・ポートマンにも同じ思いを抱いたが、ハリウッドの第一線で活躍し続ける俳優は、常に演技の幅を広げ、進化し続けている。そうでないと生き残れないのかもしれない。
本作のキーワードは「キラープロテイン」である。映画の中でウィル・スミスのオマル医師が一度だけ口にする言葉だが、とても印象的なシーンでの言葉であり、この言葉を憶えているだけで、映画を説明できるほどである。アメリカ医学界にとっても重要な言葉であるはずだ。
ところが、この映画を観るまで「キラープロテイン」という言葉は聞いたことがなかった。これはアメリカ人も同じではなかろうか。もしかするとアメリカでは、依然としてオマル医師の発表をなるべく表に出さないように、政府とNFLとマスコミが一体になって隠し続けているのかもしれない。驚くには当たらない。不寛容の国アメリカでは、そんなことはいたって普通のことなのだ。
collision
巨大利権の闇を見た
ネタバレあり。
事実に基づいた作品。様々な妨害に遭いながらも、NFLの選手たちに慢性外傷性脳症(CTE)が起きていることを明らかにした一人の医師の戦いを描いています。昔の話かと思いきや、2002年と比較的最近の話なんですね。驚きです。
NFLは巨大な組織ということもあり、自分の利益に反する事は、いかなる手を用いても阻止するということがよくわかります。FBIを動かして、微罪で関係者を排除しようとするなど、巨大利権の闇を見た気がします。
今回ウィル・スミスが演じたのはナイジェリア人医師なんですが、他の作品で見る軽妙な話術は影を潜め、英語ネイティブではない人間の英語を話しているのにはビックリ。練習したんでしょうか。
映画化されたので、スッキリと問題が解決したのかと思いきや、そうでも無いようです。集団訴訟に対しての和解はしたようですが、現役選手や選手OBにCTEが有ることをNFLが公式に認めたのかは微妙です。それより何より、選手たちが将来CTEを発症しないようにするのが急務だと思うんですけどね。
第73回ゴールデングローブ賞で最優秀主演男優賞(ドラマ部門)にウィル・スミスがノミネートされました。
いい映画です。
人気スポーツの真実を追求
【アメリカンフットボールの華やかな世界の陰にメスを入れた、骨太な社会派映画】
28%
小池百合子都知事は絶対に見るべし
今回は予備知識0で試写に挑んだ。気が狂ったホームレスが自殺する。検死官は死因を特定できず苦悶する。敬虔(けいけん)なクリスチャンである彼は死体に声をかけ真実を話してくれと語りかける。ウィル・スミス主演映画を見るのは久しぶりで途中まで気づかず、その変貌ぶりに唖然とした。別に特殊メイクで役作りをしたわけではなく、年月が彼を自然と老けさせただけです。若い頃では表現できない貫禄と知性みたいなものが滲み出て、まるでデンゼル・ワシントン状態であった。本作は実話ではあるが医学ミステリーとして見ても楽しめる一本に仕上がっている。ちなみに映画タイトル『CONCUSSION』とは脳震盪(のうしんとう)の意味で頷けた。巨大な権力にたった一人で挑む姿が小池百合子都知事と重なり、都民として感慨深い実話作品でした。分野は違えど、「豊洲問題」「五輪建設費問題」等、まさにグッドタイミングでの公開です。見て損なし!
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