「ゴロツキとコネなし」インサイダーズ 内部者たち 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ゴロツキとコネなし
スリリングなサスペンス、政界・財政界の暗部を絡めた社会派問題、バイオレンスやアクション…。
話の面白さに引き込まれ、男たちの野心や行く末から目が離せない。
THE韓国エンタメ。2015年(日本公開は2016年)の作品。評判の良さは聞いていたが、もっと早くに見ておけば良かった…。
でも今だからこそのリアルも感じる。事件の発端は、今日本のワイドショーを騒がしている“アレ”そのもの。
表向きは新聞社の主幹だが、政界・財政界に影響力を持つ策士、イ・ガンヒ。
その弟分として、悪事の数々をこなしてきた“ゴロツキ”アン・サング。
大統領選渦中。時期大統領の呼び声高い候補者に自動車会社会長から渡った裏金の存在を知ったサングは、これを強請の材料に成り上がりを目論むが、失敗。片腕を切られてしまう。
刑事から検事になったウ・ジャンフン。コネなど後ろ楯ナシ。彼も裏金ファイルを追うが、サングに横取りされた事により、左遷。
“ゴロツキ”と“コネなし”。苦汁を舐めさせられた男二人が再び相対す。
ジャンフンは一発逆転の策をサングに持ち掛けるが…。
政治家の大好物。裏金と権力。
それを全て、自分らのものに。
貪欲であればあるほど、並行して傲慢にもなっていく。
極め付けは、あの“接待”。笑い所ではあるだろうが、妙に生々しい。日本でも一時期“ノーパンしゃぶしゃぶ”とか流行ったっけ…。(流行ったのか…?)
何よりムカつくのは、部下や目下の者、さらには国民をも見下す言動。
飼い犬は主人のものを食べようとするな。
ジャンフンからどう言われようとも、ガンヒを信じていたサング。が、それが裏切られたと知った時…
もうただ黙って従うなんて思うな。
飼い犬…いや、ゴロツキにも譲れぬものがある。
スマートなスーツ姿に落ちぶれた風貌。男臭いワイルドさが滲み出る。韓国内の映画賞を総ナメにしたイ・ビョンホンのカッコ良さと熱演、魅力満載。
野心溢れるチョ・スンウ、義兄弟から敵対へ…ペク・ユンシクの存在感。
にしても韓国映画の権力者連中って、どうしてこうも悪徳&憎々しいのだろう。
キャスト陣の火花散る熱演も素晴らしいが、ウ・ミンホの手腕が特筆。
この時監督3作目。本作で一気にキャリアアップは間違いない。
サスペンス、アクション/バイオレンス、社会派と硬派のドラマを巧みにブレンドし、二転三転するストーリー展開。
イ・ビョンホンが脚本を読んで出演を即決し、『KCIA』でもタッグを組んだのも分かる。
裏金ファイルを隠し持っていたサング。こちらにとっては“核爆弾”。
これでガンヒや傲慢な権力者どもを一網打尽に出来る。
が、権力の防壁は強靭であった。
サングの悪事が暴かれ、窮地に。
長いものには巻かれろ。ジャンフンは奴らの下に入る。
あの“接待”にも参加。こんな事がバレたら…。
それが狙いだった。文字通りの潜入。映像にも収め、絶対的な証拠…いや、最強の武器。
全てを企てたのは…、言うまでもない。
ゴロツキとコネなし。蔑まされてきた反撃と男たちの熱き魂の意地を見よ!