劇場公開日 2016年6月11日

  • 予告編を見る

「ウディ・アレン流ドストエフスキー物語」教授のおかしな妄想殺人 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ウディ・アレン流ドストエフスキー物語

2016年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

好きな監督といえども、秀作打率は徐々に下降しているので、毎回おもしろい作品に出逢うとは限らない。

米国東海岸の小さな大学に、かつての新進気鋭哲学者エイブ(ホアキン・フェニックス)が赴任し、講義を持つことになった。
エイブは頭脳明晰なれど、酒に溺れ、もう自堕落を絵に描いたよう。
しかし、生来のセクシャルさもあって、同僚の女性教授リタ(パーカー・ポージー)に惚れられ、教え子のジル(エマ・ストーン)とも懇意になる。
ある日、ジルと立ち寄ったカフェの隣席から、地元判事のヒドイ仕打ちを打ち明ける女性の話を耳に挟んだエイブは、その女性に代わって件の判事を殺すことを計画するようになり、人生に生きがいを感じるようになった・・・

というハナシで、尺は95分と相変わらず短い。

けれども、自堕落エイブの情況を描く前半は、あまりにもメリハリもなく、ズンダラで、観ていて厭になる。
自殺衝動などが湧き上がって、衆目の中でロシアンルーレットに興じたりするあたりなど、笑うに笑えない。
まぁ、そもそも、アルコール依存症になると死希願望が強くなるので、「こりゃ、ただのアル中で、別に哲学者とは関係ないじゃん」と思ったりすると、もうツマラナクてツマラナクて。

その後、判事殺しを計画するあたりから映画は面白くなるのだけれど、まぁ、そこいらあたりは、生存本能と倫理が相反する物語をつづったドストエフスキーの小説の焼き直しともいえるような展開。
(そうですよぉ、といわんばかりに、前半にドストエフスキーの名前も出てきたりする)

最終的には「自らが墓穴を掘る」ような展開になるのだけれど、シリアスなのかコメディなのか、どっちつかずの映画になってしまった感が大きい。
『重罪と軽罪』『マッチポイント』あたりと比べると、さすがにウディ・アレンも衰えた。

りゃんひさ