カリキュレーターのレビュー・感想・評価
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チョコはコイン何枚?
SFで描かれる未来は押しなべてディストピア、これはロシア映画でも例外でないようだ。
舞台は惑星XT-59としているが一応大気や水は地球並み、捕食植物や殺人カビなど出てくるがエイリアンはいないようだ。移植した人類は総統と呼ばれる独裁者の管理システムに支配されているようだが、主人公のモノローグで語られるだけなので国状の詳細は分からない。
囚人たちの死刑より過酷な荒野への追放劇。10人の囚人の中には主人公の、システムダウンを仕掛けた総統の元顧問アーヴィンと役人殺しの女囚クリスティが混じっている。過酷な自然に加えて囚人同士の諍いや奇妙な捕食植物の襲撃、国家警察の追手などで壮絶なサバイバルゲームが続きます。
タイトルのカリキュレーターは数学者でもあるアーヴィンを指すようだ、当初、計算ずくで動く嫌味な男のように描かれるがサバイバル術に長けているのでクリスティも惚れてしまう。そんなアーヴィンが伏線で語る算数問題、チョコを買いたい少女だがコインが10枚足りない、少年は1枚不足、二人のコインを足しても1枚足りない、果たしてチョコはコイン何枚?
小学生でもわかりそうなひっかけ問題だが総統も間違えたという、それほど阿呆な人だったとは・・。
総統なんて呼称は何となくナチスを想起させるが、反政府者をシベリアに流刑したソ連時代にも思えてしまう。破綻したシステムは修理され以前より非情なシステムになったというラストの語り、原作者のアレクサンドル グロモフさんは社会派SF作家だから今のロシアを自虐的に皮肉っているのかも知れませんね。
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自宅にて鑑賞。ロシア産、原題"Вычислитель"。沼地に支配されたXT-59惑星を舞台としたSFサバイバル。鈍いグレーに支配された画面にA.チポフスカヤ演じる“クリスティ”のモノローグで進行するが、演者達のアフレコっぽい科白回しが終始気になった。在り来たりの噺乍ら、ノコギリ樹や殺人黴、沼地に生息する虫に加え、ローテックっぽいシステムや直線的なフォルムの飛行艇等、魅力的なガジェットが鏤められている。一難去ってまた一難と云うバッド・エンドも好み。恐らく評価が大きく分かれるであろう一作。65/100点。
・少々古めかしいストーリー乍ら、登場する生物やアイテム等を含めた渋めの映像センスや物語の背景、世界観等の好みが、評価の分かれ目であると思われる。
・ロシアではスターだと云う“エルヴィン・カン”のE.ミロノフは骨太な外観で、計算高く何事にも慎重な役柄には見えなかったが、逆にその武骨な容姿と行動力がC.スレーターか、B.ウィリスっぽく思え親しみが持てた。一方“クリスティ”役のA.チポフスカヤは、若かりし頃の荒削りなA.ハサウェイっぽく映った。
・撮影は『ファウスト('11)』、『オブリビオン('13)』、『ノア 約束の舟('14)』等でも使用されたアイスランドで22日間、ロケが行われた。 一部のスタッフやエキストラ等はアイスランド現地で募集され、参加している。
・本作の為にXT-59惑星オリジナル言語が作られ、岩場等でのシーンで使われている。
・鑑賞日:2016年5月7日(土)
映像が綺麗
ロシア製SFアクションです。地球外の惑星が舞台であり、そこでは非情な管理システムによって人々の行動が制限されています。
ここまではよくある設定で、それに対抗しようとする主人公らと政府組織の闘いに…
と、なるのが一般的かと思いますが、本作ではその主人公達は「犯罪者」としてコロニーから放り出されてしまいます。そのコロニーは都会で栄えていますが、その周囲には多くの化け物が巣食う沼になっていて、その化け物の中をくぐり抜けながら、「幸福の島?」を目指すと言うストーリーになっています。
なので、基本的にサバイバルです。かと言って対怪物をメインに置くのではなく、放り出された囚人達の対立や、主人公と行動を共にすることになったある男性の命を狙う政府組織が絡んでくる人同士の争いがテーマでした。
そのわりにはドラマが薄いと思いますし、突っ込みどころや少々眠くなる感じなど、しっかり楽しませてくれるかと言えば嘘になるかと思いますが、世界観はなかなかです。あと、無機質な中に有機的な化け物が現れたりなど、映像美も捨てたものではありません。
もう少しバトルを描いて欲しかったりなど難点もありますが一見の価値ありだと思いました。
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