「どん底」グランド・ジョー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
どん底
アカデミー賞を受賞し、多くのヒット作に出演、間違いなくトップスターとしてハリウッドの第一線に居たものの、いつの頃からかパッとしない活躍が続き、つまらないB級のアクションやサスペンスの常連となってしまった人気スター。
そう、ニコラス・ケイジ!
どうせ本作もその類いの一つかと思っていたら、近年の出演作の中ではダントツの最良作。
アメリカ南部の田舎町。前科者だが今は森林伐採業者として真面目に働くジョーは、仕事を探している少年ゲイリーを雇う。ゲイリーは父親のDVに耐えながら家族を支えていて…。
展開は淡々と進み、話もよくあると言えばよくある。
過去の罪から逃れられない男、少年の苦しみ、二人の交流、前科者への偏見、クズな父親、そして事件が…。
オチも大体予想付く。
未来ある少年の前途を遮るもの。自分の罪と引き換えに、男は…。
ニコラス・ケイジが久々に演技派の本領発揮。
本作でヴェネチア国際映画祭新人賞を受賞したタイ・シェリダンの複雑で繊細な演技が光る。
アメリカと言えば世界一の大国、アメリカン・ドリーム。
が、一度華やかな大都会から離れると、毎日の生活に喘ぐ人たちで溢れ返っている。
こんなクソみたいな生活、クズな人々、やりきれない姿を通して、アメリカ社会のどん底を抉る。
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