「本当に「世紀のスクープ」でした」スポットライト 世紀のスクープ 悶さんの映画レビュー(感想・評価)
本当に「世紀のスクープ」でした
【鑑賞のきっかけ】
アカデミー作品賞受賞作として、注目はしていたものの、未見であった本作品。
動画配信で鑑賞してみることにしました。
【率直な感想】
「世紀のスクープ」という副題は、邦題特有のものですが、この表現に偽りはない作品でした。
私は当初、ある一人の神父が、子どもたちへの性的虐待を行っていて、それを報道によって明らかにしていく物語かと思っていました。
ところが、一人どころか、何十人という神父が性犯罪者であり、最後のテロップでは…驚くべき数字に。被害者数もとてつもない数に。
鑑賞後、ネットで調べていたら、この「世紀のスクープ」の影響は、現実世界で、地球的規模で広がり、世界各地でも神父による同様の性的虐待があることが分かって、遂には、ローマ法王がカトリック教会全体の見直しに乗り出すまでになり、その見直しは、2020年代に入っても続けられているようです。
日本はキリスト教信者が割合として少ないせいか、報道されておらず、世界的な騒動になっていることを知りませんでした。
ということで、ここで一見の価値ありとして、レビューを締めくくることとなっていたことでしょう。
もし、公開当時の2015年に鑑賞していれば。
しかし、2023年現在の私の脳裏には、2022年に日本中を騒然とさせた、あの宗教法人のことがあります。
本作品とは被害の内容が違うけれど、類似している部分もあります。
それは、信者の子どもたちが被害者になっていることです。
信者が自分が信仰している宗教を、子どもにも信仰してほしいと考えることは理解できることではあります。
ところが、信仰によって豊かな人生を過ごす可能性のあった子どもたちが、その宗教に関わることで、逆に、その後の人生がうまくいかなくなるような精神的ダメージを与えられてしまう。
これほどの悲劇があるでしょうか。
2022年の報道を目にして、私は、国内でそうした悲劇が生まれていることに愕然としました。
そして、今回、被害の内容は違うけれど、「精神的ダメージ」を与えているという点で共通の悲劇が、世界中で起きていたことを知ったのです。
【全体評価】
本来、心の癒しを与えるはずの宗教が、精神的ダメージを与える側になっていたという衝撃。
「報道の自由」のあるメディアが、不正をきちんと報道することで、社会を変えるきっかけを作ったというすばらしい実話をベースにしています。
アカデミー賞作品賞受賞も納得の作品でした。