「ありふれた瞳の奥の秘密」シークレット・アイズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ありふれた瞳の奥の秘密
アカデミー(旧)外国語映画賞を受賞した2009年のアルゼンチン映画『瞳の奥の秘密』をハリウッドでリメイク…なんだけど、だいぶ前に一度見たっきりでほとんど覚えておらず。
こんな話だったけとか、見比べとか気にせず、一本のサスペンスとして鑑賞。
FBI捜査官のレイには苦い事件が。
殺人事件の報せを受け、現場に急行。レイプされた後惨殺された被害者は、同僚で親友のジェスの娘だった。
激しい悲しみに嗚咽するジェス。レイは犯人逮捕を誓う。
一枚の写真から容疑者と思われる人物を特定。執念の捜査でマージンという若い男の身柄を拘束する。
検事補クレアの協力もあって、尋問の末に自白させたのだが…。
マージンがテロ組織検挙に繋がる情報屋だった事もあり、上からの圧力で釈放される。証拠も何もかも揉み消され…。
レイも左遷。
悲しい心の傷と悔やみきれぬ悔しさを残したまま未解決となった事件だが、13年後に急転する…。
キウェテル・イジョフォーが主役だが、ジュリア・ロバーツとニコール・キッドマンの2大トップ&オスカー女優の初共演が最大の見所。
この二人が同じ画面に映るだけでも贅沢の極みだが、相対する役柄や演技も印象的。
本作でも魅せる美しさのニコール。自らの才覚で出世したキャリアウーマンの自信にも満ち溢れている。美貌と色気を滲ませながら犯人を自白に追い込むシーンは圧巻。
ジュリアには正直驚かされた。いつものスマイルや輝く魅力を封印。地味だが現場の捜査官に成りきっている。
愛娘の惨殺体を目の当たりにし、抱き抱え泣き叫ぶシーンは胸かきむしられる。
そのショックと悲しみを引き摺り、やつれたノーメイク熱演。
何やら“ジュリア老けた”との声が多いようだが、何を言う、そういう役柄と演技なのだ。娘を失った母親を体現するのに、ニコールと同じようなばっちりメイクと美貌でいろと言うのか?
オリジナルの詳細はほとんど忘れたが、社会派サスペンスの力作だった印象は残っている。
随分とハリウッド色に染まったのは巧みなリメイクだが、過去と現在が交錯し、その境が混乱するほどややこしいのはどうにかならなかったものか。
一応話はオリジナル通り故致し方ないが、
実は真犯人はクレア。レイに想いを寄せていたクレアはジェスとの仲をやっかみ、ジェスの娘を…みたいな話だったらどんでん返し級だったが、下世話な男女愛憎サスペンスになっていたか…。
事件を再捜査。マージンと思われる男の身柄を拘束する。
が、その男はマージンではないと言うジェス。何故なら…。
マージンは事件の直後、私が殺した…と、ジェス。
信じられないレイ。殺したと言うのは違っていた。
ジェスを尾行した先の郊外の家畜小屋。その檻の中に、変わり果てたマージンが…。
殺せば自分が檻の中に入る事になる。ならば私がこの手で檻の中に…。
やがて響き渡る銃声と穴を掘るレイ…。
娘を殺された母親がこの手で復讐を果たしたが、法や善悪を問うバッドエンド。
オリジナルだったら衝撃だったろうが、ちと新味と衝撃が薄れた。
ありふれたハリウッド・サスペンスになってしまった気も…。