「必然性を感じないリメイク」シークレット・アイズ 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
必然性を感じないリメイク
オリジナルはアルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」。舞台をLAに移し、アメリカの国土・風土・文化に置き換えながら、13年前の暴行殺人事件を引きずり、過去に囚われ続けた3人の物語を描く。
比較するのは望ましいことではないと分かっていても、オリジナルでの、伏線のパズルのピースをひとつひとつはめていくような衝撃と快感があまりにも印象深く、リメイクはどうなっているかな?と期待半分不安半分。ハリウッドらしさが吉と出て、より鮮明で明白な作品にでもなっていればいいと考えていた。
役者に不備はない。実力派キウェテル・イジョフォーが正義感の強い主人公を演じ、13年の時を超えても美しさと聡明さを失わないニコール・キッドマンと、愛する娘の喪失を体験し疲弊しつつも芯の強さを見せるジュリア・ロバーツ。いずれも悪くないキャスティング。ただ、演技合戦というほどには見所があるでもないので、ジュリア・ロバーツの没入ぶりくらいしか特筆するところはない。
物憂げな演出のタッチもサスペンスフルでとてもいいのだけれど、何かが足りない。なんだか、普通のサスペンス映画と同じ印象しか残らない。
オリジナルでは、犯人の釈放、相棒の殺害、愛を告げることを出来ずに離れ離れになる二人、後に明かされる犯人の消息・・・という、それらひとつひとつに大きな衝撃を受け、その都度、物語が深みと濃度を増していくという凄みと怖さと不思議な解放感があった。そういう点で、リメイク版は明らかに薄味。伏線のパズルが実に大雑把な形をしていて緻密さに欠いている。ラスト20分の衝撃をこのリメイク版でも謳っていたけれど「衝撃」という言葉を使えるほどには感じなかった。
言語が変わった分、「A」を打てないタイプライターという重要なアイテムが使えなかったのは仕方ないけど、やっぱりあれはうまい小道具だったと改めて思ったし、あれに代わる効果をもたらすものって、なかなか見つからないよなぁと思った。