「荘厳かつおバカのさじ加減が心地よい」エイリアン コヴェナント ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
荘厳かつおバカのさじ加減が心地よい
『オデッセイ』での考証とデザインなどであらためて見せたSF適正をある部分では活かしつつも、今作ではかなりのシーンで清々しくも放り投げた印象。そしてあざといまでに過去の作品(主にオリジナルと『エイリアン2』)を掘り返しては笑いにしてしまっている。あくまで個人的な感じ方ではあろうが、リドリーにしてみれば「こういうのが観たいんでしょ」というサービスのつもりなのだ。セルフパロディとも言えるアイデアの連続にこちらとしては笑うよりない。
これらはおそらく『プロメテウス』以降に制作されたSWやマッドマックスの続編の成功に由来されているのではないかと見込んでいる。特に『フォースの覚醒』には影響を受けていると思われるし、早くも決定しているという続編のタイトルはなんと「Awakening」だそうで正気とは思えない。ちなみに人類とエイリアンの起源には飽きたらしく、AIの話になるのではないかという情報がある。デヴィッドのキャラが立っているのでありがちなアイデアではある。
今作ではあいかわらず謎が多いが、もうこの前日譚シリーズではそれらがまともに回収されることはないのだろうと思える。今作の舞台はエンジニアの母星だと考えて差し支えないのだろうが位置関係は結局不明。LV-223やLV-426が地球から39光年離れたZeta Reticuliに属する同一惑星の衛星という位置関係であり、そうした設定とは対照的だ。まあそもそもZeta Reticuliというあたりがすでに悪い冗談なんだけれども。
またエンジニアの描写もよくわからず、あたかも文明が退行しているかのようであった。というかそうなのだろうが前作のエンジニアパイロットの描写と食い違いが生じている。植民船のイカれた構造とかいろいろあってポカンとするよりない。
見所はとにかくグロいということで、見事に原点回帰。アンドロイド同士の格闘とかめんどくさい方法でネオモーフを船外に放出するくだりとか‥やっぱり笑える。そうしたダークな部分とおバカな部分がいい感じに散りばめられているというリドリーお爺さんの新機軸に乾杯。
ちなみに弟のトニーがもし撮ったらこんな風になったかも‥とか鑑賞中に考えて少し泣きそうにもなった。