「シリーズで初めてハマるほど気に入った一作。」エイリアン コヴェナント kobayandayoさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズで初めてハマるほど気に入った一作。
2017年9月23日に“TOHOシネマズ 新宿”のスクリーン7にてオールナイトの最終回(日付としては24日)で、28日の夕方に立川シネマ・ツーの“aスタジオ”にて“極上爆音上映”で、10月5日の夕方(この日の最終回)に“TOHOシネマズ 日劇”のスクリーン1にて鑑賞。
1979年に製作され、20世紀を代表する異星人を題材としたSFスリラーの代名詞と言える存在として人気を博し、その後に複数の続編、番外編、前日譚が様々な形で作られてきた『エイリアン』シリーズ。シリーズの産みの親であるリドリー・スコット監督によって作られた『プロメテウス』から5年の月日を経て、同作に続く“前日譚”シリーズの最新作である本作『エイリアン コヴェナント』が製作され、興味を持って劇場へ足を運んできました。
2千人以上の入植者と15人の乗組員を乗せて、地球を離れ、入植地の惑星“オリガエ-6”を目指していた宇宙船“コヴェナント号”で船外活動中のクルーが近くの惑星からのシグナルを受信し、その地へ降り立つが、そこで船長のクリス(ビリー・クラダップ)や副官のダニー(キャサリン・ウォーターストン)たちは想像を絶する恐怖を味わう事になる(あらすじ)。
このシリーズは『3』と『4』を封切り時に、『1』を“午前十時の映画祭”で、それ以外はVHSやDVDなどで鑑賞していて、観たのは初めてではないのですが、番外編の『AVP2 エイリアンズvsプレデター』を除き、観た後に気分が悪くなるシリーズ(なぜ、そうなるのかは自分でも分かりません。一作目でクリーチャー・デザインを担当した故H・R・ギーガーがデザインを担当し、本シリーズ無くしては、決して産み出されなかったと思える『スピーシーズ』シリーズは大好きなのに)なので、『プロメテウス』を含め、そんなに回数多く観ていた訳ではなく、今回も製作が明らかとなった頃には興味を持てなかったのですが、予告が面白そうだったので、観に行きたくなり、これまでの経験から「また具合が悪くなったら、どうしよう」と思ったことで、鑑賞の前日から緊張し、それが維持された状態での鑑賞となりました。
自分の気分の影響はあったと思いますが、最初から最後まで緊張感に満ち溢れ、今までの作品を知っているので、その展開は読めてしまったのですが、メジャーなタイトルで世界中のファンを持つ人気シリーズとしては、珍しいぐらいに怖さと痛々しさに溢れ、SFスリラーではなく、ホラーの要素が色濃く、個人的に『アフターショック(2013年)』を最後にどんなホラー作品を観ても、怖いと感じられなかったので、ここまで怖い一作に仕上がっていることは驚きで、怖い作品を観たいと願い続けていたので、自分の求めていたものを本作で観られたのを、とても嬉しく思い、この怖さをキッカケに本作の虜になり、鑑賞前の心配など忘れて夢中となり、エンドロールを迎える頃には、「すぐにでも繰り返し、観たい」という気持ちになり、爆音上映も堪能し、劇場で観て、大正解な一作という印象を持っています。
過去作を観ないと話が分からない点は幾つかあるのですが、本作は、そこまで予習・復習をしないと楽しめない作品ではなく、これを観てから、過去作を観ても問題ないと自分は思います(過去作を観たいという気持ちになっていないので、それが不思議です)。『プロメテウス』は観ておくべきで、その要素が話を支えているので、これだけは重要ですが、昨今の「前作のラストシーンから始まる」とか「前作だけでなく、関連作も繰り返し観ておかないと、話の背後が理解できない」という感じのモノが無いので、シリーズ物のなかでも見易い印象があります。ただ、予習や復習とは関係の無い事ですが、本作のメインの登場人物に関する説明は殆ど行われていないので、一度の鑑賞では、主人公のダニー、アンドロイドのウォルター(ミヒャエル・ファスベンダー)、クリス船長、船員のテネシー(ダニー・マクブライド)、アップワース(キャリー・ヘルナンデス)、カリン(カルメン・イジョゴ)を除けば、誰が誰なのかが分からず、無線でのやり取りで名前が出てきても、「誰だっけ?」と思い、その辺りが不親切な点と言えて、見終わってからはキャラクターに関する資料や役柄などの説明が書いてあるサイトなどに目を通しておいた方が良いでしょう。
映像の色調、世界観、キャラ設定に明るさは殆ど無く、一作目の以前の時代を描いているのに今風な暗さが漂っていて、最新の技術でエイリアンが暴れる姿が描かれ、「オリジナルよりも動きが速すぎる!」というツッコミどころ(“スター・ウォーズ 新三部作”以降では当たり前のツッコミ)はありますが、それは全く悪くなく、今までに無いスリルを味わわせてくれて、予想していないものを見せてくれるので満足しています。終わり方は他の方々がご指摘なされている通り、後味は良くありませんが、決して中途半端にそうなった訳ではなく、筋も読めてしまう部分があったりするので、「こうなったか」と思えたりするものの、このシリーズは「エイリアンと人間の戦い」、「タフな女性が立ち向かう」、「企業と主人公の対立」といった部分がイメージしやすく、それは二作目以降に当たり前となったものと言えるでしょうが、単にエイリアンと人間の戦いを描いた話ではないことを再認識(一作目から、そうなっていましたが)させてくれていて、その見事なオチの付け方に感服し、後味は良くないのに『ターミネーター3(2003年)』、『ファイナル・デッドコースター(2006年)』、『ハロウィン2(2010年。リメイク版)』を観た時のような特殊な感動と爽快感を味わえたほどです。
出演作が絶えないミヒャエル・ファスベンダーが『イングロリアス・バスターズ(2009年)』以来の変化の多い役柄を好演し、ここ数年は常に苦悩している姿の無い印象から脱却したように見えたり、そのファスベンダーを含め、キャリー・ヘルナンデス、エイミー・シーメッツ、デミアン・ビチールといったクエンティン・タランティーノ、ロバート・ロドリゲス、アダム・ウィンガード監督作に出演経験のある俳優が出ていたり、シリーズ最大級と言えるのではないかと思えるゴア描写が満載で、このシリーズを観たことがある人にでも気軽にお薦めできず、観る人を選ぶ作品になっていたり、内容的にお馴染みのクリーチャーが出てくるのを除けば、メジャーの20世紀フォックスが配給した作品とは思えない驚き(本作よりもヒットしている“ワンダーウーマン”等が果たせなかった動員ランキングでの1位スタート、8月に公開された“ターミネーター2 3D”が日劇2での1日1度の上映だったのに、本作が日劇1で朝から晩まで上映されているのはスゴい)やB級感が満載で、個人的には2017年の新作のなかでは本作を越えるモノが無いと確信したほど楽しみました。本作の体験は決して忘れられません。
ハラハラやドキドキを心の底から、味わいたい方にお勧めしたい一作(ゴア描写に耐えられる方限定)です。