「創造主の傲慢」エイリアン コヴェナント 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
創造主の傲慢
今年はSF映画ファンにとっては最高の年ではなかろうか。
『スター・ウォーズ』があって『ブレードランナー』があって『エイリアン』がある。
『エイリアン』のエピソード0に当たる2012年の『プロメテウス』の続編。監督は勿論リドリー・スコット。
『プロメテウス』は日本の配給会社の史上最悪の詐欺宣伝のせいで、作品自体に否は無いのに、大酷評を浴びてしまったが、今回はちゃんとタイトルに“エイリアン”を冠し、『エイリアン』との関連性を位置付け。
いよいよ明かされるエイリアン誕生の秘密…。
『エイリアン』はSF映画史の金字塔で、リドリーはその創造主の一人。
だから何だか言ってはいけない空気が漂ってるが、敢えて言わせて貰う。
今回は、凡作だった、と。
別にスゲークソつまんねーってほどじゃないんだけど…、何て言うか、ダラダラダラダラダラダラ、それでいてマンネリ。
まず、最初の30分が退屈で退屈で。前日睡眠きちんと取ってなければ、間違いなく睡魔に襲われるだろう。それくらいスローテンポ。
やっと舞台の星に着いて(正確には寄って)、プロメテウス号を発見して、話が軌道に乗った。
やっとやっと“奴”が現れて、ちょっとは面白くなった。
第1作目を彷彿させるようなホラー演出、グロテスク描写。ジェリー・ゴールドスミスの音楽も流用。
シリーズお馴染みのシーンや台詞もあり、ファンにはニヤリ。
専ら原点回帰と評判のようだが…、展開も演出も見せ方も登場人物の配置も何もかも、第1作目まんま。これじゃあ原点回帰と言うより、ただの焼き直し。
“戦うヒロイン”キャサリン・ウォーターストンだが、最後にようやく体を張ったぐらいで、ほとんど何もしてない。『ファンタスティック・ビースト~』の時はエレガントで魅力的だったのに、今回は全く魅力を感じられなかったのも残念。
主役は“2体”のマイケル・ファスベンダー。ま、オチはすぐ察しが付いたけど。
『エイリアン』シリーズは勿論好きだが、誰かに説明出来るほど詳しい訳じゃない。
それでも年代など辻褄合わないのは知ってるが(と言うより、有名)、その辻褄合わない云々以前の問題。
結局話はほとんど先に進んでおらず、同じ事の繰り返し。さながら劇中の、目的の星の前に今回の舞台の星に寄り道したコヴェナント号そのもの。
リドリー御大は、後2本続編を作って、『エイリアン』第1作に繋がると言ってるが、こんなんで後2本もあるなんてキッツイ…。
さて、エイリアン誕生の秘密は確かに明かされる。
でも、何かもっとこう、未知的なものと思いきや、結局…。
今回のテーマはズバリ、創造主の傲慢。
『プロメテウス』でファスベンダーが扮したアンドロイド、デヴィッドの事であり、エイリアン誕生にも関係。
何だかそれが、無理苦理話を広げ、強引に繋げようとしてるリドリー御大にダブって見え、皮肉に思えて仕方ない。
『今回のテーマはズバリ、創造主の傲慢。…(中略)…何だかそれが、無理苦理話を広げ、強引に繋げようとしてるリドリー御大にダブって見え、皮肉に思えて仕方ない』とのコメントに、至極共感しました。