「怖いのは“悪霊”ではなく“町(の住人)”!!」喰らう家 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
怖いのは“悪霊”ではなく“町(の住人)”!!
そもそも寒々しくなるほどの雪の町が舞台となっていること自体がホラー映画には向かない。ホラーといえば夏!キャピキャピギャルも水着姿で騒ぐのがホラーってものだ(と思っていた)。
一人息子のボビーを亡くしたばかりの中年夫婦にとっては怪奇現象が起こっても、もしやボビーがいるのでは?と暖かさも感じるし、地下室が異様に焦げ臭くて夏のような暑さに暖房費節約になるじゃん!などと、ツッコミどころを考えながらの鑑賞でしたが、終盤には焼け焦げた霊たちのほうがいい人に思えてくる・・・
ポール・サケッティとアニーの夫婦の新居に訪れたのは町に住むデイブ。「引っ越してから2週間も経ってるんですか?」と驚きの表情を隠せない。これは近所なのに気づかなかった自分を恥じてる言葉ではなく、「まだ霊に憑き殺されてなかったんですか?」という意味だとわかってくる。
元々は1859年という昔に死体置き場跡に住んだダグマーという男が死体を売っていたという噂が流れ、町から追い出されてしまったという噂話があり、30年ごとに町が闇に包まれると言われていた。たまたま引っ越して来た人たちが悪霊の生贄になれば町は助かる。だからポールたちには家に留まってほしいと噂されていたのだった。
友人霊媒師たちが現れ、ポール夫妻とバー“バッファロー・ビル”の常連たちはニューフェイスたちを訝しげに見つめ、家とともに彼らを葬ってやろうという心に囚われたかのようだった。そんな間にも霊媒師メイとジェイコブの息子ハリーとその恋人ダナが悪霊に殺されていたのだが。
ボビーの霊は悪しき霊と交流を持っていたのだろうか。「早く逃げて」というボビーの声が闇での出来事を想像させてくれる。そして町の住人たちが徒党を組んで家と彼らを襲う終盤。闇を回避するためだとは言え、元々は彼らの祖先がダグマーを殺したようなもの。ダグマーたち霊が憎んでいたのは町民だったのだ。かなり社会派要素の強いホラーだったと思う。
エンドロールが始まる直前にタイトルのアップ。この“WE”はダグマーたちを指すのか、ポールたちを指すのか、どことなく霊とともに平穏に暮らしている姿も想像できる仕掛けなのだろう。霊の存在の恐怖より、田舎町にありがちな醜い住民の心が印象に残る作品でした。