劇場公開日 2016年1月9日

「あなたはDOGLEGSをみましたか?」DOGLEGS mophoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あなたはDOGLEGSをみましたか?

2018年10月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

見てる途中から涙が止まらなかった。何の涙なのか分からない。
ただ可哀想だとか気の毒だとか、それはスクリーンの中の障害者に向けられたものではなく、自分に向けられていて、特に自分の“生きる”という部分について泣いていたようだ。

もう中年といわれてもおかしくない年齢なので『何のために生きるか』などというテーマからは逃げるようになったが、そんな問いは青臭いどころか実体すらないんだろうと思わせてくれる映画だった。

登場するレスラーたちは、ただ生きている姿を晒す。
主人公と老いた母との微妙な関係性などをみても、そこには作り付けたテーマなどない、自分と同年代の男の生活そのものだ。生活の世知辛さも、ささやかな幸福も、情けない言い訳も、何にも自分と変わらない。
ちょっと違うのは、障害者だからかレスラーだからか、あるいはその両方だからか、彼らは“生きる”をフィルムと、そしてリングの上にノーガードで晒す。それが見る者に自分の“生きる”を強烈に意識させる。

気の毒な人を見世物するなと怒る人がいる。本人が望んでいないならその通りだが、本人が望んでそこで生きている場合はもっとよく考えたい。そのためにまず問いたい、あなたはDOGLEGSをみましたか?と。

mopho