「あの時は正しく、今は間違い」正しい日 間違えた日 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
あの時は正しく、今は間違い
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素敵な選TAXIというTVドラマを思い出させたプロットの作品である。はっきりと狂言回しみたいな役がいなく、あくまでもストーリーを別バージョン、又はパラレルワールドみたいに構成されている造りと成っている。
妻子がいる映画監督と、モデルの仕事を辞め、画家を目指しながら心のリハビリを行なっている女の、ある一日の出会いと別れを描いた会話劇である。それぞれのパートの撮影アングルを変化させている点も興味深い点である。
内容的には、前半パートは男の小賢しさとその化けの皮が剥がれて人間としての矮小を強調されている展開、そして後半パートは、男の正直さ、愚直さみたいな部分を強調させることで、災い転じて福と成す転がしを演出させている展開となっている。
その分かれ道のシーンは、彼女の描いた絵に対する評価。おべんちゃらと歯に衣着せぬ物言いとの差である。勿論、女性の受取り方次第と言ってしまえばそれまでであるし、それ以上の哲学的な思考はない。というより、道徳的な匂いもしている。取り繕わず、正直に生きた方が事態は好転するというメッセージを発しているのかもしれない。
しかし、自分としてはそれよりも、男と女の駆け引きの滑稽さみたいなものをコミカルに演じている、その空間そのものの何とも言えない『間』みたいなものを愉しむ内容なのではないかと思う。そういう意味ではフランス映画に近いのかもしれない。
その静かなる男女の駆け引きを同シチュエーションで切り分けした構成に、通常作品とは違う、斜め上を表現したアイロニーを感じた。実験的な作品としての面白味を感じさせてくれた作品である。
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