「芸達者脇役陣大集合」下衆の愛 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
芸達者脇役陣大集合
バイプレーヤー達の面目躍如といった配役。映画の世界の裏側を垣間見えるような内容をなぜに外国人がプロデュースしたのかという怪訝さはあるが、逆に日本人ならば遠慮してしてしまうようなことなのかもしれない。そういう意味では大変なリアリティが感じられた。いや、実際は知らないのだが・・・
主役の○○がとても素晴らしい演技。『アレノ』の時もそうだが、こういうトッポい役、アウトロー役、そして、クズ役を今一番巧く演じることが出来る役者だろう。こういう役者の人って本当に貴重だ。別に男優が全員ジャニーズではないし、だからといって西田敏行や、○○のような役者でもない。こういう喉越しが悪いザラザラした引っかかる俳優がいてくれなくては困る。こういう監督っていうのは本質なのだろうかもしれない。人生をフィルムに切り取るような神のような立場となるとこれも又一種の性格破綻者であることが絶対条件なのだろう。
助監督役の実はバイで、密かに監督に恋心を抱く設定も、一瞬劇画風のイメージが流れる本作において、ギャグの部分として貴重な緩和を与えていて秀逸である。本人が真剣で必死であればあるほど、充分可笑しい。
ヒロインの新人女優役の○○の変貌ぶりもなかなかで、枕営業の際のバックで突かれるシーンでの喘ぎ声が完全な演技だということを、敢えて主人公の監督に見せ付けるところは、この世界ならではの縮図を突きつけられたようで、息を飲むシーンだった。適当に裸はでるのだが、皆が皆、体型が崩れていてそれもまたリアリティを感じさせる、うら寂しさがある。
古館完治 ○○完治 きのしたほうか でんでん といった何重にも癖のある脇役陣、そして女優にしがみつく役をやらせたら右に出る者がいない○○等々、この世界の魑魅魍魎さが綿密に表現され、こんなグズ共が、それが故に『映画』という麻薬に侵され、そして蝕んでいく正に『業』な仕事なのだと改めて胃の奥にズシンとのしかかり、厭が応にも逃れられない妖怪達の生き様を直視させられる映画だ。ラストシーンのチンピラヤクザ達の逆襲での鉄パイプ振り下ろす寸前でのカットなど、70年代の『俺たちに明日はない』等々のギャグも織込んだハードボイルド的テレビドラマを思い出す。テレビではこういう内容は古いのかもしれないが、映画ではきっちりこのジャンルは生き続けて欲しいと切に願う。
※ポートレートの『ジョン』は、ジョン・カサヴェテスの模様