光りの墓のレビュー・感想・評価
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男たちは眠り、オバさんは眼を見開く
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記憶が垂直に積み重なった映画だなあと。
王宮の跡地に建った学校。学校は廃れ改装され病院となる。その病院が舞台。色んな時代の色んな記憶が堆積した場所。戦い、恋、家族……、大きな出来事だけではなく、鳥の声、風の音、陽の温度、サラサラ、サラサラそよぐ木々、全ての記憶が詰まっている。
幾重にもかさなるエスカレターと人並み。様々な人が入れ替わりに座る公園のベンチ。そこにも、たくさんの人が通り過ぎたくさんの記憶が堆積していく。誰かの記憶を覗くのは、誰かの夢を覗くのにも似ている。
この映画は、死者の記憶も覗く(記憶のさかのぼりが王宮だけでなく、もっと先、恐竜→ミトコンドリアまで行く所に、ちょっと笑った。テレンスマリックというより、それを真似たアロノフスキーやベッソンを思い出してしまって何だか申し訳ない)。
長い長い歴史を経て、今がある。
記憶の堆積した場所で、男たちは眠る。
オバさんは眼を見開き、掘り起こされ土煙をあげている「今」を、見つめる。
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監督の『ブンミおじさん』が好きだったので結構期待していた。ブンミおじさんより、説明過多でパワーが落ちたかなあという印象。それでも充分楽しかった。
ブンミおじさんの豊穣さに比べると、本作はどこか焦燥が漂う(それは本編前流された監督インタビューの印象からきているのかもしれないが)。「今」を見つめることへの焦燥なのかもしれないなあと思った。
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