「現代の日本人が忘れかけているモノ作り(軍艦など)の大切さに気付かされた。」劇場版 艦これ eigazukiさんの映画レビュー(感想・評価)
現代の日本人が忘れかけているモノ作り(軍艦など)の大切さに気付かされた。
「艦これ」は「艦隊これくしょん」の略称である。「艦隊これくしょん」は2013年にサービスを開始したオンラインSNSゲームであり、ゲームプレイヤーが旧日本海軍の艦艇の名前を冠した女性に擬人化した軍艦の神たち(艦娘:かんむす)のネット空間上の疑似カードを集めて(コレクションして)「艦隊」を編成しコンピューターが操作する「敵」とゲームデータを比較して対戦して軍艦の神たち(艦娘:かんむす)を育てて愛着も育てるコンピューターゲームである。本作「劇場版 艦これ」(2016年)はコンピューターゲーム「艦隊これくしょん」の登場キャラクターの軍艦の神たち(艦娘:かんむす)を主人公にしたオリジナルアニメ化作品である。南の島に集まった軍艦の神たち(艦娘:かんむす)は正体不明の謎の敵と交戦し、戦場に残された謎の少女を回収する。その少女にはある秘密があった。主人公の艦娘「吹雪」は謎の少女との出会いをきっかけに自らの運命とも向き合うのであった。
点数:3.5。お勧めします。ただし艦娘たちのファンになることが必須条件。このアニメ映画は登場キャラクターの艦娘たちをただ見て楽しむ性質の映画でありストーリーは取ってつけたようで正直面白くない。しかしこの「艦隊これくしょん」というコンテンツ全体は人間の革新的な創造性の素晴らしさを体現しており人類の歴史的に意義のあるものとなっている。そもそも原作となったコンピューターゲーム「艦隊これくしょん」には物語はない。このゲームはゲームプレイヤー自身が艦娘たちとの「物語」を頭の中で勝手に創造して遊ぶ性質のゲームである。なので、この映画「劇場版 艦これ」(2016年)は従来の受け身的な映画の鑑賞法ではほとんど楽しめないと思う。この映画は登場キャラクターを見ながら視聴者自身が頭の中にストーリーを新たに補足し創造して初めて楽しめる内容の映画となっている。
私がこの映画で気に入っているシーンは駆逐艦の艦娘「吹雪」が海中に沈んでいくシーンである。彼女は頭を海底側にしてまっさかさまに海底に沈んでいく。太ももに装着された魚雷が取れていくさまは彼女が戦闘から解放され自由になったことを暗示する。海底に落ちていく主人公「吹雪」の姿は伝説的アニメ映画「天空の城ラピュタ」(1986年)での囚われの飛行船から脱出し落下してゆっくりと空から落ちてくるヒロインの少女シータの姿に重なる。(シータは尻から落ちるが吹雪は頭から落ちる。)落ちる少女の絵は何かから解放され自由になった人の比喩であろう。天使が下界に降りた、あるいはかぐや姫が月から地球に降下したという場面を私は連想した。吹雪は物語の終盤で復活するのだが、キリストの復活のごとく吹雪が海底からよみがえって海岸に上がってくるシーンはこの映画の名場面のひとつであった。
日本は明治維新以後、西洋にならいアジア・太平洋に君臨する海洋国家となった。それを支えたのが大量の船であった。明治以後の日本人は西洋列強にならい商船や軍艦を大量に作った。私はこの映画は日本のモノ作りを後世に伝える重要な役割を持っていると思った。艦娘たちは日本人が西洋列強の真似をし作り上げた日本の艦船の末裔たちである。日本は西洋列強の真似をし、モノを作り、アジアに独自の一大文明を作り上げたのだった。先人にならいモノを作る。すべてはここから始まったと思う。現代の日本人はモノ作りの基本を忘れかけている。日本という国家の基本であるモノ作りを大切にし勢いがあるのはいまや日本の漫画や少し前のゲームやアニメの業界くらいである。現代の日本人はこの映画「劇場版 艦これ」(2016年)を観て巨大艦船を大量に作っていた昔の日本人の偉大さをぜひとも感じてほしい。人はなぜ映画を観るのか。映画には「何かを新しく作るためのヒント」が詰まっている。人が何かを「作る」とはモノだけにとどまらない。人類を幸福にする「ことば」、「モノ」、「創作物」など、何かを作ることの素晴らしさを私はこの映画から学んだ。人は「作る」ために映画を観るのだ。新しい何かを作れる人類は素晴らしい。「作る」ことの大切さをこの映画からぜひ学んでほしい。
ジブリ映画「君たちはどう生きるか」(2023年)では主人公の少年、眞人(まひと)は屋敷に現れた敵とも味方ともつかぬ不気味なしゃべる鳥のアオサギに対抗するために自分で弓と矢を「作る」。そのとき屋敷の使用人のおばあさんのキリコにこう言われる。「ぼっちゃん、屋敷にはすでに完成品の立派な弓と矢がありますよ。こっちを使いなさい。(意訳)」ところが眞人はその誘いを断る。「弓と矢は自分で作る。(意訳)」この場面からは自分で新しく作ることの素晴らしさがわかる。このジブリ映画は自分で作ることの大切さを説いている。私は若者に将来のアドバイスを送るとすればまずこう言うだろう。「何かを作れる人間になれ。」または「映画などの完成された物語を見るのもよいが自分の「物語」も大事に作りなさい。」新しく作ることは全ての人類に与えられた最大の特権であると思う。この特権を使わないでいる人間のなんと多いことか。世の中はいまや完成品にあふれている。安いからといって中国やアジアの人々に作ってもらっている。現代日本人は「自分で作る」ことの大切さを忘れてはいないだろうか。「作る」ことは「考える」ことにもつながる。完成品に囲まれて現代日本人は作ることも考えることも忘れかけている。映画「劇場版 艦これ」(2016年)に登場する女性の姿をした軍艦の神さま(艦娘:かんむす)をよく見てほしい。この旧日本海軍の軍艦の部品を身にまとったセーラー服の少女たちは現代と明治以降の近代化した日本をつないでいる。現代の日本人にはモノつくりの大切さをいつまでも忘れないでいてほしいと思った。
視聴:液晶テレビ(有料配信アニメタイムズ) 初視聴日:2025年7月13日(約一か月前) 視聴回数:1(早送りあり) 視聴人員:1(一人で見た)
追記:登場する艦娘たち
駆逐艦 吹雪(ふぶき)
駆逐艦 睦月(むつき)
空母 赤城(あかぎ)
空母 加賀(かが)
戦艦 大和(やまと)
など他多数
※以下は2025年7月13日に書いた昔のレビューです。
キャラクターを売り込んで商売したい映画
女子高生の姿をした船の神様の日常を描く神話アニメ。主人公は太平洋戦争時の日本海軍艦艇の駆逐艦「吹雪」の船の神様だが他の日本海軍の船の神様たちも多数登場する。
点数2.5。お勧めしません。物語というよりは神様たちの映像のグラビア写真集。本作品は歌って踊るかわりに大砲を撃ったり艦載機を出撃させる女性アイドルたちの南国の島の海岸のイメージビデオだと思ってもらってよい。ゲームやフィギュアやカードなどいろいろな関連商品と複合して楽しむための作品で映画単体で楽しめるかというとそうでもないと思う。
物語は難しくないので難しいことは考えなくてよい。そのぶん船の神女性アイドルたちのその魅力を見たり声を聞いたりすることだけに集中できる。名前のもとになった日本海軍の艦艇のスペックをチェックして楽しんでもよい。本作品は物語の意味を考察するような映画ではなく、しゃべって動くキャラクターを売り込むための商品イメージ映像集やコマーシャル映画に近いと思った。メディア戦略を活用し多数の関連商品で儲ける商売は企業や宗教と似ている。儲けるためには消費者や信者にキャラクター関連商品を買わせたり商店や映画館や神殿に足を運ばせるのがよい。じゃんじゃん宣伝して多数の「信者」をつくり彼らの人生を人気キャラクター漬けにすると企業が儲かる仕組みになっているのである。
視聴:液晶テレビ(有料配信アニメタイムズ) 初視聴日:2025年7月13日 視聴回数:1(早送りあり) 視聴人員:1(一人で見た)