「角川映画40周年記念作品なのにこの程度の出来」劇場版 艦これ GM屋さんの映画レビュー(感想・評価)
角川映画40周年記念作品なのにこの程度の出来
原作ゲームの一提督として楽しみにしていたアニメ版が散々な出来だったことからこの映画への期待値は低いまま鑑賞致しました。
アニメ版のシナリオ・演出全てにおいて出来の酷さを知っている身からすれば他の方が言われるように戦闘シーンのクオリティの高さやアニメ版で不評だった要素をバッサリカットし原作ゲーム内で明言してこなかった艦娘達と敵の関係性という点に一つの答えを出したお話という原作ゲームファンという内輪向け用映画として成功していると言えます。
が、それはあくまで内輪向けであって大衆向けではありませんし、公開数日で一時品薄となったパンフレット見開き1p目に製作総指揮角川のお偉いさんの言葉にもありますが「角川映画40周年記念唯一のアニメタイトル」という看板を背負っておきながら全体的に粗の多い映画というのがこの作品です。
まずこの映画、アニメ版で不評であった戦闘シーンのダサさという面では確かに脱却し、迫力のある戦闘シーンでかつ作画も良好なのですが例えば中盤、アニメ版で沈んだはずの如月が仲間の元に戻ってきたあと自身の身体の異常に気づきソレをなんとかしたいと精神的に追い込まれ身体から血が流れるまで執拗に洗うという半ばお約束的なシーンがありますがそのシーン、声優さんの鬼気迫る演技が光るのですがどうしたって絵が崩壊気味でキャラの口の動きと合っていない。彼女の不安・恐怖という心情を見せにゃいけないシーンでこれはないだろうと鑑賞しながら白けてしまいました。
例えば今年アニメ映画代表作とも言える「君の名は。」はガシガシ動くシーンも静のシーンも作画崩壊なんてことは無くむしろ細かな登場人物の動きを見せるなど大変素晴らしい出来だっただけに「あーぁ」という言葉しか出ません。
戦闘シーンでも遮蔽物のない海上で戦う以上、お互い敵を見つけたらドカドカ撃ち合うわけですが、迫力のある砲撃による水柱が上がる中を敵弾避けながら進むなど素晴らしいシーンもあるのですが、アニメ版でも何度もやっていた、敵の目の前で棒立ちになって主人公たちが会話するというマヌケという以外に評することのできないシーンがいくつもあり、おそらく迫力のあるシーン作った人とマヌケなシーン作った人違うんだろうなーと考えてしまうところもありました。
じゃあ、シナリオはどうかといえば
アニメ本編最終回付近では主人公達艦娘はかつて軍艦として沈んだ際の記憶を思い出すのがごく一部いて、かつて沈んだ戦いと同じ戦いへ挑み歴史の修正力というわけでないですが自身らの運命に抗うという良くある転生モノだったのですが
今作映画版ではそこに更に新設定として、艦娘の中には沈んだあと敵となってこちらと戦っていたという記憶をもった者もいる という設定が追加されます。
が、この設定を追加されたのがTV版本編でも準レギュラーとしてほぼ毎話出ていたキャラでTVアニメ中それらを匂わすようなシーンなど微塵もないまま劇中で「実は~~~」と語られ出すので 後付け乙!としか言いようのないシナリオ
そして主人公吹雪も実は今作の事件に関わる事としてさきほどの設定が関わってくるのですがそれすらもTV版ではプレイヤーである提督に戦力として呼ばれた理由が提督の夢の中でウエディングドレス姿の彼女がいっぱい話しかけてきたからという今作のストーリーに全然関わらないどころかゲロキモイ理由だったのですが、昨年春のTV版制作時点では今作のシナリオは出来上がってなかったんでしょうがあまりにも無理くりすぎてドン引きすらしました。
公開館数が全国的に少ない割には特典つけたりしてるんで興行収入という面では一応の成功を見せている作品ではあるので原作ゲームファンなら見ても損はしないと思いますが、少なくとも「映画」としての出来、まして歴史ある角川映画40周年記念作品という看板を背負うにはあまりにもな出来なのは確かです。
まー、どうせ作画崩壊気味な部分も円盤で修正入れますーとかやって利益につなげる気なんでしょうが天下の角川が記念作品でそんな事やるのかーと呆れてしまいます。
艦これ自体大衆うけするアニメではないです。君の名はと比較するのは自分的には少しずれているのではないかと思います。如月のシリアスなシーンも艦これのアニメではなかったものですし、そこまで(口が合ってなかった)と批評するほどのものではなかったです。全体的に、アニメの悪かった部分をかなり改善され良い作品になったと自分は思います。まぁ公開されている映画館の少なさは考えもんです笑笑