「善良さと信仰心によるミッション:インポッシブル」バジュランギおじさんと、小さな迷子 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
善良さと信仰心によるミッション:インポッシブル
迷子の少女を、敵対する隣国に送り届けるという「あり得ない」話だが、インドでの前半は、警察も、大使館も、旅行業者も当てにならない状況を描くことで、主人公の行動に説得力が感じられるようになっているし、パキスタンでの後半は、地元のジャーナリストとのロードムービーとして楽しめる。
ただ、迷子の少女は、確かに愛くるしくてかわいいのだが、自らの勝手な行動で親とはぐれてしまったことを反省することもせず、何度も自分勝手に行動するところや、手癖が悪いところには、少なからず違和感を覚えてしまった。
主人公にしても、善良で信仰心に厚いのは良いのだが、「神のご加護があればうまくいくはず」という信念だけで、何の計画も算段もないまま行動するのは、あまりにも無謀だと思えてしまう。
中でも、最も印象的なのは、主人公が、パキスタンの国境警備隊にわざと見つかって、何度も入国の許可を得ようとする場面で、その非常識とさえ言える度を超えた正直さには、少々うんざりしてしまった。
その一方で、政治や宗教に凝り固まった相手の心を動かし、解きほぐすことができるのは、こうした純粋で真っ直ぐな人間なのかもしれないとも感じられ、そういう意味では、こうした主人公の愚直さは、「あり得ない」話に真実味を与えているとも思えるのである。
いずれにしても、すべての約束事がきっちりと果たされる予定調和の結末に、思わず涙腺が崩壊してしまうのは、主人公たちにどっぷりと感情移入しているからで、彼らのキャラクターが、人間の善意を信じたくなるような魅力に溢れているからだろう。
コメントする