劇場公開日 2015年12月12日

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「もともとコミュニケーションというのはぎこちないもの」ハッピーアワー SHさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5もともとコミュニケーションというのはぎこちないもの

2015年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

この映画が女優賞を獲得したことは衝撃というほかない。というのも、ひとりひとりの演技は非常にぎこちなくて、はっきりって上手くない。決して下手ではない。内面というものを巧みに表現できているような印象をもつから、むしろ素晴らしい表現をしているといえる。ただ、その台詞回しは非常にぎこちない。でも、それが不思議なリアリティーを生み出しているように感じてしまう。何せ、この世の中のコミュニケーションというのは、実はぎこちなかったりするわけで、上手い役者のようにはなかなか振る舞えないものであるのだから。
この映画の最大の難点はなんといってもその長さ。すべてを見ようとすると5時間以上もかかってしまうわけで、気軽にというわけにはいかない。正直あんなに長い必要があったのかどうか大いに疑問に思うところもある。しかし、その脚本はその長さの分だけ濃いものがあり、手を抜いていたずらに長くしているのではなく、詰め込みたい内容があるから長尺になってしまったという意気込みは感じる。ただ、さすがに削れる部分はあったように思ってしまう。
導入部分、正直睡魔に襲われた。しかし、語られるセリフの量が増えるに従って徐々に魅せられていく。人々の会話の面白さ、会話の中で巧みに捉えられるひとりひとりの表情、それらが見事に融合して、人間関係の面白さがどんどん伝わってくる。
話の内容は、現実世界に起こりうるものばかりで、突飛な展開というのもそれほどない。しかし、どこにでもあるような展開されているはずなのに、人々が織りなす人生模様が非常に面白い。そう感じてしまうのは、見事な脚本があったからなのかなーと感じた。
後半もやや退屈感を感じてしまう。それまで、会話や表情などで丁寧に描かれていたものが、それこそ特殊な出来事や展開に頼ろうとした意図が見え隠れしていて、それがかえって自分の興味を削いでいったように思う。展開を動かしたこと自体に不満はないけれど、丁寧な描写が徐々に薄れていったように感じてしまったことが、後半の退屈感につながっているように思う。
それにしても、この映画がどのように構築されていったのか、その演出とか撮影風景なんかが全くイメージできない。まるで、そこら辺で起こったことをそのまま編集したような印象を持ってしまう。それくらいリアリティーがあったし、それゆえの女優賞なのだろう。自分としては、勝手ながら、監督賞が最適かなー、と感じた作品。

SH