劇場公開日 2016年2月27日

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「余韻が残る不思議な魔力」女が眠る時 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5余韻が残る不思議な魔力

2022年10月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

最近、説明が丁寧で判り易い作品が多い中、久々に観た難解な作品だった。本作は、リゾートホテルに滞在した二組のカップルが織り成す異色ミステリーである。作家である夫は、作家を辞めて就職することになったものの、執筆活動に未練があり、次回作が書けずに悶々としている。編集者である妻も夫の再起を強く願っている。そんな夫は、偶然、ホテルのプールサイドで見かけた親子ほど歳の離れたカップルに興味を覚え、二人の不可思議な世界に溺れていく。

観念的な作品なので、几帳面に、場面、場面をジグソーパズルのピースのように嵌め込んでストーリーを明確にしようとすると、思考の迷宮に入り込んで、監督の罠に嵌ってしまう。意味不明な作品になってしまうので、美術館にいる感覚で、場面、場面を絵画のように楽しみたい。その為に、監督は、風景の美しさ、若い女性の瑞々しさなどの映像美で魅力的な場面を用意してくれている。

ラスト近くの夫を祝う会食シーンで、バラバラに見えたジグソーパズルのピース(場面)が一気に嵌め込まれ、ストーリーが垣間見える。プールサイドで、カップルを見るように促したのは妻。夫が見ていることがばれないように、帽子越しに見ることを勧めてくれたのも妻。そして、ラスト近くの夫を祝う会食シーンで妊娠していたのも妻。結局は、夫の再起を強く願っていた妻が仕組んだことだと推察できる。合点がいく。

本作は、鑑賞後、余韻がいつまでも残る。様々な場面がフラッシュバックしてくるので再解釈を試みるが、なかなか明快な答えに辿り着かない。思考の迷宮から抜け出せないので、また観たくなる。不思議な魔力を持った作品である。説明は極力排除して、映像表現主体で、解釈は観客に委ねるという本作の手法は作品を難解にする。しかし、謎めいている方が魅力的に感じるという人間の心理を巧みに利用しているので、劇中の夫が歳の離れたカップルに溺れたように、我々観客も、本作に魅了されてしまう。

みかずき