「災害で荒廃したディストピア」SLUM-POLIS odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
災害で荒廃したディストピア
大体のディストピアものは第三次世界大戦後というのが相場だったが南海トラフを使うのは邦画らしい、ロケ地に東北を使えたからだろうか・・、いや、もっとしたたかな暗喩があるのかも知れない。
原発事故で人間が逃げたあと、残された家畜やペットが野生化したり処分された惨状を知って落ち込んだ。主人公の3人も、まるで野生化した野良犬のようだった。
戦後もまた地獄、闇市で必死に生きる戦災孤児、生きる為に進駐軍に体を売る「肉体の門」、そして今また未曽有の災害の後、悪夢のようなディストピア、スラムポリスが描かれるのは意味深だ。
戦争や災害に襲われるたび人心の荒廃を繰り返すのは人の業とも言えるが映画のようにならないよう残っているであろう人々の善意、良心に縋りたい気持ちで一杯だ。
大阪芸大の若者の作品だからか絵画や音楽が希望のモチーフに使われている、醜美の対比も凄まじい、挑戦的な作品とは言え内容は悲惨を極め、観ていて愉しい部類の映画ではないのでなんとも評価が難しい。
「海燕ジョーの奇跡」も暴力団抗争に翻弄される若者の映画だったがドラマの質と言う意味では藤田敏八さんの方が数段上だろうが、二宮健監督はまだ若いので荒削りは致し方あるまい、自主制作映画としては驚きの出来、役者も無名ながらセリフを抑えて表情で描いてゆく手法なので妙にリアル、よくぞここまで悪人面を集めたものです。薄幸のヒロインがアンナと言うのも妙にツボ、好きな甲斐バンドの名曲に被ってしまう。小野亮子さん熱演でした、監督はヒロイン募集していたようですが、まさかノーギャラじゃないですよね。
ついでに気になったのは、レビューを書くにあたってオフィシャルサイトをクリックしたら九要AVという中国のポルノサイトに飛ばされてしまった。劇中でも中国人グループが出てくるが資金援助でも頼んだのかしら・・。