「Oner」ぼくとアールと彼女のさよなら Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)
Oner
2015年サンダンス映画祭でグランプリを獲得したアルフォンソ・ゴメス=レホン監督の作品。
一番最初に目に止まるのは、カメラワークとフレーミング。
カメラワークはかなり多くのワンショット撮影を用いており、まるでカメラがダンスをするかのように部屋の中をぐるぐると回るような動きをします。
このカメラワークは単純にプロダクションで時間と手間がかかり大変ということがまずあります。それをこれだけの数取り入れたのはかなり大変だったんだろうと思いますね。
しかし、その力は映画の中で十分に発揮されていたと思います。まず、観客の視線と注目を集め、映画に食いつかせるという意味でワンショットはとても機能していました。
それに加え、ストーリーと主人公グレッグの心情の波に乗って、カメラワークの趣向が変化し、時には戻っていき、最終的には進化する様子には驚きました。
そしてフレーミング。マーティンスコセッシのもとで修行したということからも納得いきますが、多くのショットで、シンメトリーだったり、フレームに平行な画角がとても多かったです。
それもまた、サブコンシャス的にグレッグの心情を表現していたり、グレッグが暮らす環境というものを描く技術として用いられていました。
それに加えて、ストップモーションを使ったおとぎ話のようなフィクションの世界を劇中に登場させるところからも、そのきちっとしたフレーミングが、コメディ要素だったり、高校生のピュアな感情だったりをとても効果的に表現していました。
ストーリーはいわゆる恋愛もので、見ていながらワクワクすることはできませんでしたが、クライマックスのシーンにはある程度驚かされました。そこまでのドラマ要素から飛躍して、抽象的な比喩的表現をドラマに重ねることで、そこまでの高校生らしいピュアな様子と、そこから自分の色を見つけていくキャラクターたちの個性だったり、その集団の絆だったりを受け取ることができました。
撮影に関して言えば、ワイドレンズの使い方でさらにフィクション要素を夢だったり、超現実的なものへと転身させていくところには、映画の序盤からとても惹きつけられました。
ワイドレンズの空間を引き延ばす効果を使って、キャラクターの若さや不安定な様子を描き、ズームインを使って観客をあえてキャラクターから遠ざけ、観客個人の目でグレッグを見せることによって、観客も一人のキャラクターとしてその映画に登場するような感覚を与えています。
これまでにはあまりロマンス映画で見られなかった角度のキャラクター展開で、今後の作品でロマンスコメディを作っていくのかが気になりますね。