「『アベンジャーズ』の幕間。」スパイダーマン ホームカミング とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
『アベンジャーズ』の幕間。
この話の筋なら、スパイダーマン=ピーターと、敵役・バルチャーと、ネッドがいればいい。
アイアンマン要らない。
スパイダーマンとバルチャーがお互いに素性を知るシーン。
ぞくっとした。
さすが、キートン氏。
でも、それを受けるホランド氏もいい味出していて、すごく緊迫したシーンになっている。
中二病さながら、世界は善と悪との二元論で、善は、自分は世界を救えると思っていた高校生。
それが…。
そして、そこからの決意・行動。
エンディング後の〇〇にもぞくぞくした。
うん、これだけで良い物語・映画を観た気になれる。
かつ、ほっこりとした笑いを入れてくれるのが、ネッド。
青春ものとして観ると、学園パートや家庭も描かれているが、中途半端。
ヒーローものとして観ると、CMでも流れていたような船が割れるシーンとか、〇〇が破壊されるシーンとかNYの夜景とか派手だが、全体的に大雑把。
それでも、トゥームスの設定をこのようにすることで、一気に話が引き締まる。
(尤も、ラストのピーターの言動にはらしいことを言っているけれど、話が表面的に流れているだけとがっかりした。頭脳明晰な設定なのに、暗記項目覚えているだけの頭の良さか、かわいいだけの小学中学年か!)
ただ、これって、スパイダーマンである必要があるのか?
他の若年ヒーローでもいいのじゃないか?キックアスやヒットガールでもいいのではないか?
『スパイダーマン』を語れるほど、観ているわけではない。原作も読んでいない。
確か、蜘蛛に噛まれて特殊能力を身に着けてしまったのではなかったっけ?
でも、この映画だけを見ていると、特殊スーツがあるから人間離れしたことができるように見える。
それってスパイダーマン?
『アメージング・スパイダーマン2』では、スパイダーマンが身に着けてしまった特殊能力の素(といっていいのか?)の研究を巡っての話が展開していたような気がするが…。
『スーパーマン』にも、『バッドマン』『ハルク(TV版)』にも、彼らなりの背景があった。でも、この映画の『スパイダーマン』には15歳という以外に背景はない。
『アベンジャーズ』シリーズありきの映画。
『アベンジャーズ』が、世界の破滅等の大げさ設定を打ち出した後で、総何回も危機的状況で映画を作れないから、つなぎとして制作したかのように見えてしまう。
それはそれでファンには歓喜に値するものなのだろうな。
だから、アイアンマン主要メンバーも出てくるし、他のヒーローも顔見世する。否、興行成績を上げるための顔見世。
他の方のレビューを拝見すると、いろいろな権利問題が絡んでいるらしい。
だから、正統なスパイダーマンを描けず、スパイダーマンの衣装を借りた別設定になっているのだろうか?
ただ、私は『アイアンマン』が好きではない。『アイアンマン3』と、この映画のアイアンマンしか見ていないけれど。だから『アベンチャーズ』シリーズも観ていない。
この映画でもそうだけれど、えらそうなことを言うけれど、ツッコミどころ満載。設定は大仰で、深刻な台詞もあるが、上っ面だけ。悩んでいるふり。
「責任」とか言いながら、スタークも責任をとっているのか?
子どもを危険な場から遠ざけたいのは判るけれど、それでいてハイスペックなスーツを渡す。「FBIが」と言いながら、そのことをちゃんと説明していない。ピーターを暴走させているのは君だと叱りたくなる。
世界救済の戦いは命がけ。それは感謝と称賛に値する。でも、今回のような残務処理で「責任」をとっているつもりなのか?
この映画の物語の大筋は絶賛したいが、細かいところで?が一杯。
契約ってどうなっているの?いくら公的権力による破棄だって、一方的に発注元がキャンセルしたら違約金が出るのでは?スタックの企業が一方的にキャンセルしたのならなおさら違約金でないの?契約大国USAなら発注・受注契約の時、その条項盛り込んでいるのでは?あれだけ、家族と雇用者に対して責任を負う社長なら。一見、トゥームスの言い分に共感したくなるが、詰めが甘い。
あのような宇宙物質を扱って、体や周りに影響でないのか?あの宇宙物質を扱っているうちにヴィラン化した設定でもよかたのでは…。
そんな宇宙物質を、一般的な産業廃棄物業者or土木業者にいきなり任せるのか?日本なら、まず、行政が立ち入り禁止にして、調べてから発注しそうだが。発注してから仕事をキャンセル?後から宇宙物質が見つかったのならわかるが、野ざらしだったのに?
設定のための設定にしか見えない…。
ピーターやネッドにほっこりし、
トゥームスの迫力を堪能するものの、
ながら鑑賞でもいいかなあと思ってしまう。
ホランド氏・バタロン氏やキートン氏の無駄使い。
勿体ない。
(東京国際映画祭2021 屋外上映にて鑑賞)