「庇護欲をそそられる」スパイダーマン ホームカミング mmさんの映画レビュー(感想・評価)
庇護欲をそそられる
他の監督のスパイダーマンは無印の1と2を昔観た程度だが、
あまりピーターが善人な感じがしなかったので(最初からではないが、途中からそうなったように思う)
底抜けに純粋な善人であるこのピーターにホッとした。
アベンジャーズメンバーは大人なので、ヒーローでありながらも罪を犯したり、時には利己的に行動し
それが人間らしさに繋がっていて良いと思うのだが、
まだ15歳の、ともすればトムホランドの童顔と若々しい声によってそれよりももっと
幼く見えるピーターは、このくらい純粋で利他的であっていいと思う。
故意ではないにせよ、サンドイッチ屋の主人には何のフォローも無く不憫なのだが…
無料の船や地下鉄の駅など、ロケ地巡りが容易なためファンには嬉しい。
日本人の目には不自然極まりなく映るヒロインたちの配役と、セクシー過ぎる叔母の描写なども現代的で良いと思う。
余談だが15歳の天才少年が若くセクシーな叔母と暮らしているという設定は「Big Hero 6」の主人公を思い出させる。
「Big Hero 6」は人間キャラクターの知名度が著しく低いのでそんな人はあまり居ないと思うが、私はなんだかニヤリとさせられてしまった。
ちなみにAvengers: Age of Ultronではこの主人公の兄の名前が出てくるが、
この兄の名はおおよそアメリカで頻出するような名前ではないため、こういった関連性を妄想するのも楽しい。
しかし。ピーターがより庇護欲をそそるキャラクターになるため、結果的には良かったのかもしれないが、
トニーは子供相手に冷た過ぎるのではないか?もっと不器用ながらも、父となり兄となるトニーの姿が観たかったので残念。
中身の入っていないスーツはトニーらしいし、このシーンがあるおかげで「どうせ中身入ってないんでしょ」→入ってた!
のシーンはピーターに感情移入しながら(ちゃんと中身が入っていることを見せながら迫ってくるトニーに、
ピーターは喜びと驚きと、直接叱られる恐怖とでドキリとしたに違いない)観ることができるのだが、それにしても冷たい。
それを言ってしまうとストーリーが成り立たないのかもしれないが、ピーターの言う通り、
トニーやハッピーがちゃんと話を聴いてくれていたら、まさにその通りなのである。
トムホランドは成熟して大人びていることが「美」とされるアメリカで人気なことが不思議なくらい、
幼く愛いらしいことが「美」である日本人から見ても、とても魅力的。そんなトムホランド演じるピーターは何しろ庇護欲をそそる。
トニーが冷たいことで観衆はより庇護欲をそそられる。少なくとも私はそうだ。狙ってやっていたら凄い。
トニーの冷たさもピーターの魅力を引き上げているため必要なのだろうが、唯一不必要と思ったのはペッパーの再登場か。
ファンサービスのつもりなのかもしれないが、その過程はきちんと描くべきだし、何よりこの映画でやる必要がない。
前半のピーターがトニーに憧れ、冷たくされながらもその背中を追って見事成長した後、
後ろをついて歩くのではなく、並んで歩こうとするピーターに、トニーは一抹の寂しさを覚え、
不器用な男なりにスパイダーマンだけでなくピーターという人間を必要としている自分に気付く。
トニーの方も本当の意味でピーターの方を向き始めるというとてもとても大切なシーンである。それなのに!!
トニーの夫婦事情は別の作品でやればいい。この作品で大切なのはピーターとトニーの関係である。
以上大真面目に批評を書いてみたものの、「ハグじゃない、ドアを」のシーンのピーターが愛らしいとか、
アメリカ人の少年とは思えないくらい素直にわんわん泣くピーターが愛らしいとか、
ヴァルチャーのヴィランスーツがMCUヴィラン至上最高にかっこいいとかそういう感想でも良いと思った。
最後だけ残念なので-1だが、とにかく楽しい映画でした。