「皺皺になる前に。」しあわせへのまわり道 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
皺皺になる前に。
デキる女ほど身近な人に喪失感を与えているのかもしれない。
夫との外食中に突然別れを切り出された主人公ウェンディには
耐えがたい屈辱だったんだろう、タクシーの中で号泣している
姿にこちらまで胸が痛くなったが、後に夫との会話の中で君は
僕じゃなくパソコンばかり見ていたじゃないか。という一言に
そりゃ浮気した女のもとに走る夫はサイテーだが、全く眼中に
置かれていなかった夫の気持ちを慮ると寂しかったんだろうと
気が付くのだ。人生の荒波や破綻は突然降っては湧いてくるが、
そんなところで尻ごみしていたらあっという間に10年は過ぎる。
女は立ち直りも早い。皺皺になる前にさっさと歩きださねば。
タレントのYOUみたいな顔立ちのP・クラークソンは相変わらず
身軽で可愛い。捨てられてワーワー泣いたと思えば、悪たれを
ついて愚痴って憤慨して、中年の極み下ネタも堂々と言い放つ。
こんなピョンピョンした女に、重鎮でございますキングズレー
氏のターバンが(これまたピンクで)色鮮やかに洗礼をかます。
どう見ても男女の関係にはならんだろう^^;的な二人の距離が
街中を運転する過程で解けていって、同志的な友情が芽生える。
監督自身がそうだったようだが、こういう時傍で支えてくれる
人というのは有り難い存在だと思う。一つの選択肢として運転
免許を取得し娘の元へドライブするという目標を掲げ、真摯に
取り組むところは女性には共感度大のはず。そしてその姿勢は
政治亡命してきたシク教徒タクシー運転手ダルワーンが抱える
問題(籠りがちな妻)への対処法にも繋がってくる。結局のところ
お互いをよく見て常に思い遣っていこうねというストレートな
行動に尽きるのだが、夫婦になるとこれを毎日は難しいもの^^;
女性は、あー分かる分かる。男性は、へーそうなんだ。お互いに
こんなことで相手は喜ぶのかとそんな勉強になる人生運転物語。
(私もペーパー(師匠じゃなくて)ドライバーの端くれ。運転は恐怖)