「その純粋さを忘れないでほしい」ワンダーウーマン みうらさんの映画レビュー(感想・評価)
その純粋さを忘れないでほしい
この夏、数ある大作映画の中で特に楽しみにしていた本作。前評判も良く楽しみにして行きましたが、期待通りの秀作。
やっぱりヒーローものこそこうであってほしい。
まずは何よりも主演ワンダーウーマン、ダイアナことガル・ガドットの魅力に尽きる本作でしょう。
スーパーマンの全身タイツをカッコ良く魅せたヘンリー・カビルに並んで、普通の人ならまず着こなせないワンダーウーマンの鎧を、ああも見事に装備するあたり、彼女はやはり神の子なのでしょう。
表情が豊かで、常時口角の上がった口元は育ちの良さを感じプリンセスらしさもあり、目に宿る輝きは力強い。見た目からスーパーヒーロー。
今では彼女以外のワンダーウーマンは考えられません。
アクションもスローと早回しによる少し古臭げな撮影が気持ちよく、ワンダーウーマンの浮世離れした力を際立たせている気になりました。
クリスパイン演じるスティーブとダイアナのテンポ良い会話は秀逸。
劇場内でもクスクス笑いが起きていました。
島から出るシーンで、粘土から産まれた云々の会話は特に好きです。
スティーブのラストもよくある展開ではありますが、彼のキャラ立ちがしっかりしているので感情移入もしやすく、ホロリとしてしまいます。
女だけの島で気持ちいいくらいにまっすぐ育ったダイアナは、純粋な心で戦の神アレスをこそ倒せば人間の世が平和になると信じてやまない。そのまっすぐさは近年の一癖も二癖もあるヒーローにはない、昔懐かしい力強さのように感じました。
戦争を止めるためのダイアナは無知で理想主義で、戦争はそんな甘いことじゃないのも分かっている。しかそ、それこそダイアナが突き通してくれたら観客も応援できるというもの。そのまっすぐさこそこの映画の面白さだと感じました。
本当に神がいるなら、その理想を叶えられるかもしれない。
その神こそ、愛の神ダイアナなのだと信じたい。
今作では世間を知らないダイアナが、その圧倒的な力で敵を倒して行きますが、今後のDCUではダイアナが世間を知りもはや敵なしになってしまうのではないかと一抹の不安を感じました。
無理を言えば戦争のシーンは、もうちょっと血を流してゴア表現を強めて、より戦争の残酷さを描いていれば、ダイアナの純粋さが輝くように感じましたが、それは無理な話でしょう。
とはいえ、この夏公開映画の中では、ダントツで面白い作品なのは間違いない、誰でも楽しめる映画です。
鑑賞した映画館がかなり広いスクリーンで、5.5×13.1mでダル・ガドットを観れたことを幸せに思います。