「当事者によるシリアの記録」それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさと ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
当事者によるシリアの記録
サッカーユース代表のGKとして活躍していた19歳の若者が、シリア内戦の反政府側のリーダーになっていく(なってしまうというべき)様子を反政府側の人間によるカメラで捉えた貴重な作品。
第三者のジャーナリストが後からまとめたような作品ではなく、当事者がカメラを回して撮っているので、強烈な迫真性がある。実際にカメラを回しながら戦場の最前線で戦っている。
始めは自分にできることで祖国に貢献をという純真な思いで民主化運動に投じた若者。たまたまスピーチの才能があり、民主化運動のリーダー格となっていくが、政府側のデモ攻撃によって170人が犠牲になった後は、武器を手に取ってしまう。そこから悲愴なゲリラ戦が始まる。彼の表情もどんどん戦士のものになっていく。人が狂気にのまれていく様子を、その人物の隣りで撮影しているのだ。観ていて苦しくなる。どこをどう見ても出口が見当たらない戦いを見せられる。
しかし、広く観られるべき作品だと思う。これが現実だと受け止めなければいけない。
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