「中弛みではなくラストで失速」TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ 森泉涼一さんの映画レビュー(感想・評価)
中弛みではなくラストで失速
本作が延期の原因となったシーンであり、物語の始まりであるバス事故が冒頭であるが、意外にもこのシーンはあっさりまとまっていて本編開始数分で地獄へ直行することになる。なぜあっさりとしたまとめ方にしたのかも後々理解できると面白い構成だと感じ取れる。
バス事故で地獄行きとなった大助(神木隆之介)が現世に転生するためにキラーK(長瀬智也)とロックバンドの猛特訓をするという何ともクドカンらしいユニークなコメディ映画となっているが、地獄の構図は真面目に描いている。地獄でバンドの猛特訓、現世に転生するという非現実的要素を面白おかしく描き、舞台となる地獄自体は巻物で丁寧に説明を加え、自身の生き様で今後の地獄人生が変わるという現実的要素も混交させる。
とはいってもメインとなるのは地獄でのロックバンド結成という面にあり、純粋な恋愛を望みながら捻くれた性格がゆえに地獄行きとなった大助が地獄に染まっていきカオスになっていく様とそのカオスの元凶キラーKの破天荒っぷりを楽しめなければ本作の魅力は見出せない。
前述にも述べたが、バス事故前の一連のシーンは省いているがうまくまとめてある。そこに肉付けしたシーンを中盤付近から回想シーンとして挿入してくるが、大助の恋の真相や地獄での出会いから派生したバスでの出来事を加えることにより冒頭のバス事故シーンが「伏線」ならぬ「布石を打つ」シーンとなっていることをじわじわと感じられるのも単なるカオスコメディではない証拠と言えるだろう。ただ、中盤まではこれらもあり中弛みはないものの、終盤になると一気に失速。クドカンのやりたい放題の演出についていけず、煮え切らないまま終了となるためすっきりはしない。
最後に、中村獅童がどこで出演していたのかが不明。噂によると一言しか話していないらしいが、探してみるのも面白いかもしれない。