「創作以上の存在」ブロンソン ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0創作以上の存在

2023年11月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

単純

難しい

イギリス史上もっとも有名な服役囚、チャールズ・ブロンソンことマイケル・ピーターソンの半生を、かなり忠実に描いた作品。
ん?もっとも有名な服役囚?大量殺人鬼とか凶悪犯罪者とかではなく?というところがポイント。

この、ブロンソンことピーターソンは殺人は犯していない。罪状は比較的軽いものが多い…のだが、とにかく暴れまくる。収監された刑務所で暴れに暴れて、細かく出たり入ったりを繰り返しつつ結局現在まだ服役中。

その暴力の源が、”有名になりたい”という、一見なんの繋がりもない功名心と暴力が彼の頭の中ではガッチリつながっている。と言うのも、歌は歌えない、演技はできない、じゃあ、暴れるしかね?と常人には理解できない思考回路で暴れに暴れまわる。

そうして外の世界でひと暴れすれば行きつくところは刑務所。彼は刑務所ならそれ以上行き場が無いことをいいことに、看守たちを相手に日々大暴れを繰り返す。
そんな、魅力も何もない、むしろ嫌悪感しか感じない人間をどうやって描くか、それがこの映画の最大の見どころ。

そこで監督が採り入れたのが、ブロンソン本人の独白形式とする演出上の仕掛けと、トム・ハーディの怪演だった。
トム・ハーディ恐るべし、スキンヘッドとそのゴリゴリのゴツい体で暴力命の男を熱演、間の独白も狂っているブロンソンの心情をよく描き出していて、良くも悪くもトム・ハーディありきの映画となっている。
もう、冒頭からフル×ン姿で大暴れするトム・ハーディに圧倒される。

じゃあ、映画自体はと言われると、比較的現実に忠実なだけに思ったよりも平坦な印象。特に強烈な自我というか勘違いでもいいから確固たるものがあるわけでもなく、ビンラディンを仕留めようとしたおっさんや、クマに襲われても大丈夫なスーツを開発しているおっさんに比べて、究極の目標が無い分、落ち着き先がなかなか見つからない印象だった。

それにしてもブロンソン、武器をほとんど使わない。肉体一つで暴れまわり、怪我を負わされた看守は20人以上いるとか。絶対不利な看守vs服役囚でそれだけ怪我人出すとか、なんか他に生きる道はなかったんかなぁととても残念。
なんだか映画の感想よりもブロンソン本人の感想になっちゃったよ。

ハルクマール