「優しい人間」COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック kazep9691さんの映画レビュー(感想・評価)
優しい人間
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今でも憶えているが、大学の図書館でカートの自殺を知った時、強い違和感を感じた。普通、人生で最良の時 (ミュージシャンとしての世界的な成功と、幸せな家庭を手に入れた) に、何故、あの様な自虐的で悲惨な死に方をしなければならなかったのか、理解できなかった。
この映画では、普通に考えれば、決して陽の目を見ることができなかったであろう映像や音源が散りばめられており、カートの実像に肉薄している。
家族に受け入れられず、疎外感を抱え続け、そして、ついに愛すべき家族を手に入れた。その過程が、この映画では描かれている。しかし、そのストーリーが進むにつれ違和感が募ってくる。最後がどうなるのか、誰もが知っているからだ。
この映画を観て、少し、理解できたのかもしれない。
最後のインタビューでコートニーは告白している。
彼を裏切ろうとしたことを。そして、彼は、その事を知っていたということを。その直後、彼は、大量の睡眠薬を摂取して昏睡状態に陥入り、回復したのも束の間、自分の頭を散弾銃で吹き飛ばした。
彼は繊細で、とても優しい人間だった。
怒りの矛先を、愛する人ではなく、自分自身にむけた。自分を裏切ろうとした、愛する人ではなく、自分にむけて、愛する人を憎もうとしている自分の頭を吹き飛ばした。
彼の魂が、安らかであるように。
彼が、もし、生きてくれていれば、僕らを幸せにする音楽を創り続けてくれたであろう。
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