「幸せそうに‘見える‘だけで、実際は分からない。」二重生活 smallbearさんの映画レビュー(感想・評価)
幸せそうに‘見える‘だけで、実際は分からない。
他人を見て幸せそうだなと感じている時点で、満たされていないのかも知れないなと思った。他人の生活を覗いてみたいと一度は思ったことあると思う。結局自分よりも上か下かでマウントをとりたいためかもしれないが(笑)友達の話を聞いていても、大体がへえ~という感想で終わるみたいに、他人の生活を覗いたところで特に印象に残らずに終わると思う。何か特別な感情が生まれるような生活があるなら覗いてみたいと思うが。
論文のためとはいえ、最初に提案されたときは戸惑っていた主人公だったけれど、いざ始めてみたら今までの退屈していた、自分の中にぽっかり空いた穴が埋まっていくような気がして、どんどんはまっていく様が分かりやすかった。門脇麦ちゃんの表情・目が戸惑いからある種の使命のようなものに変わっていった気がする。この映画では尾行した人の生活がたまたまネタの宝庫というか、題材にするならばもってこいの内容だったから良いものの、これがもし何もない人の生活だったらあんなにハマったのかな、と無駄な疑問が生まれた。
菅田将暉は出ているけれど、出ていないような空気感でとても上手だなと思いました。この二人が交わることはもうないのかな、と少し寂しい気持ちになった。
周りには絵に描いたような理想の家族と思われていた石坂家であったが、少しずつ綻びが生まれ崩れていく様子が分かった。奥さんはきっと前から疑いを持っていたと思うが、夫を信じたい気持ちがあって行動に出れなかったんじゃないかな。主人公が尾行し始めてから、生活が崩れ始めたとなるとこいつのせいだ、と思ってしまうのは仕方ない気もする(笑)完全に責任転嫁だけれど。
映画を通して思ったのは、あまり深く他人を知りすぎない方が良いということ。世の中に何の秘密もありませんよ、なんて人はいないと思う。長い人生において、皆なにかしらの秘密は持っていると思う。表に出すか出さないかの違い。
映画は終始盗撮っぽいというか、誰かの目線で見えている感じでユラユラしていたので、たまに酔いそうになったけど面白かったです。