「ボヴァリー夫人とスケベェ親父」ボヴァリー夫人とパン屋 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ボヴァリー夫人とスケベェ親父
19世紀の名作文学『ボヴァリー夫人』をモチーフにしたグラフィックノベルを映画化したフランス映画。
まず、『ボヴァリー夫人』の話を知らないといけないので(名作文学なのに知らないという…)、いつもながら、教えてWikipedia~!
田舎町の平凡な結婚生活にうんざりしたエマ・ボヴァリーは、自由で華やかな世界に憧れるも、不倫や借金に溺れ、最後は人生に絶望し、自殺する…というもの。
さて、本作は…
フランスの田舎村でパン屋を営むマルタンの愛読書は、『ボヴァリー夫人』。
ある日向かいの家に、イギリス人夫妻が越して来る。奥さんの名は、“ジェマ・ボヴァリー”。
何処か『ボヴァリー夫人』と重なる彼女にマルタンは惹かれ…。
誰だって隣にエマニエル夫人が越して来たら色々妄想しちゃうが、それを名作文学に置き換えたとしても、やってる事は同じ。
その美貌もさることながら、パンをこねてみたいと言い、「ここ、熱い…」と言い、上着を脱いだ時のうなじ、胸の膨らみ…。絶対、誘ってるよね!?
背中をハチに刺され、背中のボタンを外し、背中に口を付けて毒素を吸い出すという端から見れば背中にキスしてるような事もOK!
これら実際の振る舞いも、妄想も、もう止まりません!
そんなジェマに、マルタンだけじゃなく村の男たちもメロメロ…。
とにかく魅惑的なジェマ。演じたジェマ・アータートンも然り。
ジェマから目が離せなくなったマルタンはある日、ジェマが夫が出張で留守中、若い男と密会している事を知る。
ジェマの行動はますます『ボヴァリー夫人』を連想。
と言う事は、最後も。アクシデントとは言え、ジェマを巡る騒動は思わぬ結末へ…。
『ボヴァリー夫人』を地で行くようなジェマは自由奔放でありながらも何処か悲劇的。皮肉めいたものも感じる。
でも最も皮肉的なのは、マルタン。
ラスト、向かいの家に、新たな女性が越して来る。
何か困った事があったら何でも言って…と、一見親切な隣人のように思えるが、下心見え見え。
本作はスケベェ親父の艶笑劇であった。