「チベットとは何か?」ルンタ はち公さんの映画レビュー(感想・評価)
チベットとは何か?
チベットで起きている悲惨な現状についてはあえて私が述べるまでもないが、知らない方は是非この映画を観てほしい。
そして、皆で解決法を考えて行けたらと思う。
映画で案内人を務めるのは、「チベット問題に関わる人で、この人を悪く言える人はいない」中原一博氏である。
彼を主役に選んだのは、ある意味で素晴らしく、またある意味でズルイとも言える。批判のしようが無い。
映画は、前半をインドのダラムサラにおける難民達の証言にスポットを当て、後半はチベット本土に入る。
ちなみに、映画中で詳しくは述べられていないが、チベット本土と言ってもいわゆる”自治区”ではなく、アムド(青海省)である。
「監視の厳しい自治区でカメラなんか回せるか!」という事のようである。
そして、実際に焼身自殺が行われた場所を巡る。
この辺り、サスペンス仕立ての潜入ドキュメントにする事も出来たであろうが、そうはなっていない。
映画を撮影する上で実際に苦労があったであろうことは十分に伺えるが、そこはどうでも良いようである。
実際、チベットにおける焼身抗議者の数は年々増え続け、もはや「数」でしか把握できない状態にある。
しかしこの映画は、その一人一人に人格があり、様々な思いを持っていたという事を思い出させる。
そして、抗議の自殺が多発する反面、一見のどかな遊牧民の暮らしが残っている事も再認識させられる。
人権が保障されない中での焼身抗議を受けて、我々が政府の政策をただ非難する事は難しくない。
しかしそれでは、どこか遠い世界の他人事になりかねない。
彼らが命をかけてまで訴えたかった事は何か、守りたかったものは何か。この映画は、それを訴えているようにも思える。
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