「ミュージカル! ミュージカル!!」ラ・ラ・ランド ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)
ミュージカル! ミュージカル!!
いやぁ~、久々に楽しかった!
ミュージカル、ジャズ、演劇、そして映画。
その美味しいところを『ギュッ』と絞った”濃縮ジュース”みたいな作品ですよ。
本作「ラ・ラ・ランド」はオープニングから、いきなりミュージカル全開!!
ありえない場所で、大勢のダンサー、シンガー達が唄い、踊ります。
先日観た「サバイバルファミリー」の矢口監督も、同じような場所で撮影しているのですが、
「日本ではまず、許可が下りないです。僕の映画では奇跡が起きました」とのこと。
本作で注目したいのは、その撮影技法。
キャメラは歌い踊る俳優達をあらゆる角度から、長廻しで撮っているんですね。
俳優達の踊る立ち位置、音楽とダンス、流れるようにスムースなキャメラワーク。
これらは実に緻密に計算されています。
多分何回もリハーサルしたんでしょうね。
ダンサーとスタッフたちが心を一つにしないと、絶対実現しないんですね。
しかも、これは手持ちカメラじゃないんです。(クレーンやステディカムを使っていると思います)
だからスクリーンの画面はガンガン動くんだけど、全くブレません。
音楽とダンスの流れを絶対邪魔しないように、キャメラはスムースに動くんですね。なんともニクい撮影技法です。
まあ、この冒頭のシーン、じっくりお楽しみくださいませ。
デイミアン・チャゼル監督は、ここで一発、
「本作はミュージカルなんですよ! どうぞ、楽しんでね!」
とお客様に提示しているんですね。
堅っ苦しいことは抜き。
映画は楽しくていいじゃない?!
僕みたいな映画マニア崩れ、評論家ぶった連中に多いんですが
「こんなものは映画ではない」とか
「こんなこともわからずに映画を撮ったり観たりしているのか!!」
などと眉間にしわを寄せて、映画を熱く語ったりします。
僕は思います。
「そんなもん、どうでもいいじゃん!!」
「だって楽しいんだもん」
本作はそう思わせてくれるんです。
僕は音楽映画が大好きです。
最近ではクリント・イーストウッド監督の
「ジャージー・ボーイズ」
https://www.youtube.com/watch?v=hpBPUapfxag
これ、もう何回DVDレンタルしたことか。ヘビーローテーション状態です。
それに「Ray/レイ」も良かったなぁ~。
https://www.youtube.com/watch?v=jVHCQfcugdw
ジェイミー・フォックス、神がかり的な演技でした。
ピアノもうまいんですよね。
さて、主人公のミア(エマ・ストーン)はスターを夢見る女優の卵。
映画スタジオ内にあるカフェで仕事をしながら、オーディションを受け続ける毎日。
僕は初めて「アメリカの映画スタジオ」というのを本作で知りました。
あのねぇ~。
これ、一つの街なんですよ。
街中にはいくつも建物がある。その一つ一つがスタジオです。
街の中も、いたるところオープンセットになっていて、いつもどこかでロケ撮影が行われています。
ミアが勤めるカフェには、撮影中のトップスターさん達(もちろんセレブですよね)が、
「カプチーノ二つ、お願いね」
なぁ~んて、当たり前のようにやってくる。
店長は揉み手をしながら、
「何をおっしゃいます、お代など結構ですよ! サービスでございます**様」
とセレブ女優に無料でカプチーノを差し上げるんですね。
ミアは、素人の僕から見れば、こんな羨ましいような環境の中、カフェでアルバイトをしているんですね。
でもミアはそんなことで満足していません。
「わたしだって、いつかは無料サービス”される側”になってやるゎ」
とオーディションを受け続けます。
でも、なかなか女優さんへの道は険しいですね。
同じく
ジャズの一流ミュージシャンを目指す若者がいます。
ピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)です。
彼も、ユニットを組んで活動したり、レストランで『BGM』としての、ピアノを弾いている。でも、そこはミュージシャンとしての性みたいなものが、ついつい顔を出します。
彼が演奏しているレストランの店長は厳しい人です。
「おい! オマエ! 即興演奏なんかやったら即クビだぞ!!」
ちなみにこの店長。
監督の前作「セッション」でジャズの鬼教師役を演じたJ・K・シモンズさんなんですね。その演技が絶賛されてアカデミー助演男優賞を受賞しました。
その前作「セッション」
https://www.youtube.com/watch?v=mZjUEIV2Ru4
デイミアン・チャゼル監督の演出力、映画監督としての技量。圧倒的な作品完成度の高さ。
まさに映画マニア・映画評論家たちを「ギャフン」と言わせました。
映画通、映画専門家をも唸らせる、それだけの力量を持った監督さんが、本作では一転「映画のイロハ」さえ知らない人たちを「楽しませる」映画を作ろうとしたんですね。
僕はそこが何よりすごいと思います。
得てして、専門家から高い評価を得たクリエイターたちは
「難解な」「専門的な」「素人にはわからない」
そういう作品を作る傾向があります。
本作で描かれるのは
挫折と成功、恋と歌と踊り、そして何よりジャズ!!
でも、
「ジャズは、もう絶滅寸前だ」
と監督は本作の登場人物に語らせるシーンがあります。
古き良きジャズを愛する人たちにとって、今のジャズはそう感じるのでしょうね。
でも
「そうじゃない、ジャズは常に新しく生まれ変わっているんだ」
とジャズの可能性を探る、そういう台詞も、監督は本作の中で使っているんですね。
デイミアン・チャゼル監督は「セッション」で、もう「ジャズ」を描き切ったんじゃないか?
僕はそう思っていました。
だって「ジャズのなんたるか?」をきちんと理解し、自分の感性で咀嚼し、その上であんなに「インパクト」をもった作品を世に送り出すなんて。
並みの映画監督じゃありません。
それこそ一生のうち、そんな作品が作れたら超ラッキー。
「映画の神様が微笑んだ」
そういう映画だったんです。
しかし、監督はエネルギッシュですね。
全然燃え尽きてなんぞいない。
「最高のミュージカル」を「最高のジャズ」でやってみよう。
監督はいい意味で「欲深い人」だと思います。
ジャズと同じく、映画の可能性をまだまだ発展させてくれる。
僕はそう信じていますよ。
それにしても、この映画は”オイシイ”ですねぇ~。
ああ~、早く、もう一回観に行きたい!!