劇場公開日 2017年2月24日

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「音楽だけでなく「絵」も楽しめる映画。」ラ・ラ・ランド moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5音楽だけでなく「絵」も楽しめる映画。

2017年3月5日
PCから投稿

悲しい

楽しい

「パリのアメリカ人」「シェルブールの雨傘」といった、過去のミュージカル映画の感覚を現代に持ち込んだ作品。

それに加えて個人的に特に楽しんだのは、この映画の色。近年の映画は映画の色彩がドキュメンタリータッチの冷たい色使いか、ポストプロダクションの過剰な(簡単に言えばケバイ)ものばかりで、画面自体の配色にはっとする、というような事が少なくなってしまった。この映画では黄金時代のクラシック映画が持っていたようなカラフルな色彩を堪能する事が出来る。

数年前のアカデミー賞受賞作、「アーティスト」も過去のハリウッドへのオマージュだったが、クラシック映画への愛情が非常に表面的で、当時の雰囲気をなぞりたいだけというような映画だった。それに比べてこの映画は単なる「再現」ではなく、様々なアイデアを散りばめながら、古いものを現代的な新しい感覚へとちゃんと昇華出来ていると思う。

二人の物語が四季になっているために、けんかの場面が急な印象(ケンカがエスカレートする過程に無理がある。)になってしまっている点や、肝心のジャズ音楽が何回も繰り返される2曲を除いては、それほど印象に残らない所など気になる箇所も無くはない。

それでも、映画全体としてはすごく堪能したし、「映画は政治的でなければならない」「政治的な映画の方が偉い」というような最近の映画のあり方にうんざりしている自分としては、こういう映画にがんばってほしいと思う。

メッセージがない?そうではなくて、「映画が好き」、「音楽が好き」。芸術への情熱、それ自体が、この映画のメッセージだと思う。

moviebuff