「派手さはないけどシンプルな良作」ダーティー・コップ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
派手さはないけどシンプルな良作
密室での、男二人芝居。
もちろん、ワキを演じるいろいろな登場人物は居るには居るが、イライジャとニコラスの演技合戦と言っても差し支えない内容で、特に、イライジャの心理が手に取るように分かるのは、彼の表現力が飛びぬけているからに他ならない。
レビューの評価が異常と言っていいほどに低いので、本当は星5つにしてあげたいくらいだが、音楽のセンスがどうしても受け入れがたいので減点、星4つです。他の人のレビューはどれも短絡的なものばかりで、派手な演出や、鮮やかなアクションを期待して見た人なのではなかろうか。そういう人には確かに期待を裏切られた感は否めないだろう。それでも、サンプル数が少ないので、ステマとかで簡単に評価が上がるのに、そうならないってことは、関係者にすら見放された作品なのだろう。そんなにひどい映画じゃないけどなぁ。
ストーリーは良くまとまっているし、必要な部分だけを残してごっそりと無駄をそぎ落とした内容なので、「あとは見る人の想像にお任せします」といった作りなのだ。動機がはっきりしない、なんて感想もあったが、ニコラスはバイトで稼いだチップのほうが給料より高いなんて言っているほど、安月給だが、警官という仕事の「うま味」を知り尽くしているのだ。毎日、つまらない仕事で、証拠品をくすねては小遣いを稼いでいる、汚職警官が、大きな逆転のチャンスに賭けてみようと思い、その相棒にはやや頼りないものの、ドラッグと売春に溺れたイライジャは丁度よかったのだろう。
一人が徐々に暴走を始め、もう一人が急に怖気づくという心理を、巧みに表現しているシナリオは、ていねいに練り上げられているし、結末の逆転に至る、トリックは見事としか言いようがない。
前半の、悪徳警官ぶりが鼻につき、「この二人が、悪事を働いて、何事もなくうまくいったら、何かイヤだな」「きっと、取り返しのつかない失敗をやらかすんだろうな」と思っていたのですが、彼らも高い代償を払ったものです。
とても面白い逆転劇でした。
2017.7.4