「解説します」アイズ 羊羹さんの映画レビュー(感想・評価)
解説します
難解なようなので、僭越ながら簡単な解説を残します。悪いのは父、幽霊はいない、という話です。
きっかけは十数年ほど前の話です。
父は仕事の都合で、ある女性と一緒にいました。まさにそのとき、不幸な交通事故にみまわれ、女性は身ごもっていた子供を亡くしてしまいます。この女性は父の勤務先の社長令嬢であり、その時一緒にいた父は仕事をクビになります。父はこのことをのちに、「自分が彼女の運命を変えてしまった」と主人公に懺悔しますが、本心はわかりません。
女性は狂い、生まれてくるはずだった娘と同い年の翔太に執着し、主人公の目の前で絞め殺してしまいます。そして、まだ少女の主人公に「おまえのせいだ」と言い捨て現場を去りました。
しばらくのち、家を空けていた父が帰宅すると、翔太の遺体を見つけます。主人公から事のあらましを聞いた父は、翔太の遺体をどこかへ遺棄します。妻には翔太が行方不明だと嘘をつき、娘には「翔太はそこにいるじゃないか」と言い含めました。この瞬間、主人公は自分の心を守るため、「翔太の死を知る自分」を封じ、「そこにいない翔太を視認する自分」を作り出しました。時折出てくる幽霊少女の正体は、この時から時が止まっている「翔太の死を知る自分」自身です。
友人の交通事故による死に過敏に反応するのは、こういうトラウマがあったためです。
そして、幽霊少女は”父”が翔太の居場所を知っているということを自分に伝えるため、主人公の体を使って”FATHER”という文字を書き残し、ときに翔太の幻を引き離そうとします。幽霊なんていなかった、という話でした。
ちなみに、この主人公ですから、FAITHなんて難しい英単語は書けません。”H”の文字を消したのも何もかも、すべて父のミスリードですよ。
ここからは私の推測ですが、父は保身のために翔太を遺棄したのでしょう。今後女性に引き立ててもらうためか、女性の子を殺した贖罪か、はたまた女性に恋をしていたか。少なくとも彼が、自分より家族が大事、などと考える人間でなかったことは確かです。娘に”FAITH”を強要する父です。
ところで、父は「立派な父親になったら帰ってくる」と言っていたはずですが、最後のシーン、いったいどこで何をしてきたのでしょうね。