「惜しい点はあったが、背景を良く作りこんでいた」ラザロ・エフェクト R41さんの映画レビュー(感想・評価)
惜しい点はあったが、背景を良く作りこんでいた
2015年の世界観
間違いなくホラーというジャンルになる作品
このラザロは聖書の中の登場人物で、イエスによって復活したことが書かれている。
私がこの言葉をその他で知ったのが「Re:cyborg」で、007グレートが尾行してきた敵を倒したときに彼が使った言葉で、その意味は理解できたのだが、その言葉をその後に検索しても見当たらなかったことを覚えていた。長い間009の製作者側だけで使用されていたのかなと思っていた。
それ故にこの作品に興味を持った。
この作品は、あくまで死者の復活を描いていて、いわゆるゾンビものとは一線を画す。
ホラー特有の描き方で、最後はハッピーエンドかと思いきや…。
さて、
なかなか面白いストーリーになっているが、2点問題があった。
犬のロッキーの異常をクレイが指摘したにもかからわず、ビデオで確認することなく仲間を疑っていること。
まったくお決まりのことだが、最後にフランクが一人でゾーイと決着をつけに行くこと。
ここの部分が別に差し替えられていればよかったと思った。
ゾーイは、殺したフランクたちを蘇らせることでエンドロールになるが、こう言うのがホラーなんだろうと感じた。
また、
ゾーイの過去は変身したゾーイのむき出しの心情に直結していると思われるが、ロッキーもまた飼い主の虐待を受けていたのかもしれない。
ゾンビ作品では、人がゾンビを退治しても心が痛まないような感覚になるが、普通に話すことのできる復活者との対峙には葛藤がある。
復活したゾーイは超能力に目覚めるが、彼女は何故ロッキーを殺したのだろうか?
ロッキーにも謎が多く、フィジカル的にも知能にも進化が見受けられるが、怒りのような感情を抑えられない特徴もある。
しかし複数人の人間の前では大人しくしていて、散歩するにも問題はない。
ロッキーはゾーイのベッドの上に立ち彼女を見つめるシーンがあるが、あのシーンではまだロッキーの認識がぼやけていて、ラボでクレイだけがいたシーンで暴れたが、彼に噛みつくようなことはしていない。
ロッキーにもゾーイ同様人の思考がわかったと仮定すると、ロッキーは人の悪意に反応するのかもしれない。
ゾーイに唸り声で威嚇したのは、ゾーイにあった悪意を感じたからだろう。
このゾーイの悪意の根源は、幼少時にした放火事件に由来する。
それを彼女自身が封印していたのだ。
地獄のような悪夢
これはその後のゾーイの人生を予感させていて、彼女が信じるキリスト教の神、そして断罪へとつながってしまう。
自身の罪を認めなかったゾーイに神が下した断罪。
この研究室のある大学が宗教的な大学であるというのも面白い設定だった。
誰か裏切り者がいると見せかけておきながら、
研究のスポンサー企業とハッキングされていた監視カメラ
そして製薬会社に買収されてしまったスポンサー会社
全てを取り上げられてもなお監視されているというのは非常に興味深い設定だった。
また、
ゾーイはエヴァに敵意を抱いていた。
若く美人で人気者
そして脳という不可思議なもの
目や耳などの五感はすべてアプリで、その感知したものを脳が再編成して認識させている。
この概念から、覚醒したゾーイはエヴァの脳をハッキングしたのだろう。
彼女が見た映像はすべてゾーイの見た夢を転写させたもの。
ところが、
恐怖を与えるつもりだったが、エヴァによって自身の過去を再認識してしまう。
しかし同時にゾーイはすでにそのことも思い出していたのではないかと解釈した。
エヴァは視聴者と共にいたが、でもゾーイはその先に回り込んでいたのだ。
倒されたのは「彼女」だったという恐怖。
このあたりの作りもかなり凝っていた。
ホラー
やっぱり本当に怖いのは「人間」なのかもしれない。