「ガオー」ロスト・リバー nok0712さんの映画レビュー(感想・評価)
ガオー
ライアン・ゴズリング初監督作品。
役者としての彼はたくさん見てきたが、その特異性は監督業でも遺憾なく発揮されている。
荒廃しゆく街「ロスト・リバー」を舞台に、困窮し先の見えない生活から抜け出そうと藻掻く少年、少女、母親の3人の物語。
登場人物は皆「呪い」を抱えている。
昔から住んでいる家を手放す事ができずローンの支払いのため怪しげなショーで働こうとする母親ビリー、ダム建設の際の事故で先立たれた夫が忘れられず以来言葉を発さず結婚式の映像を繰り返し見る老婆、その老婆から離れることができず唯一ネズミを愛でることで自分の居場所を確保している少女ラット。
但し、「呪い」は彼らを縛り付けているが、彼らは決して「呪い」に苦しんでいる訳ではない。「呪い」は彼らの生活の一部となり、生活に溶け込み、その存在を示すことなく彼らをその先へ進ませようさせない足かせとなっている。
そして新たに、少年ボーンズが食い扶持としていたスクラップ集めをギャングのブリーに邪魔をされ「呪い」に縛られる事になる。
彼にとってみればビリーがローンのために働くことも、ラットの鼠(ニック)がブリーに殺されてしまったことも、全てブリーにスクラップ集めの邪魔をされ、目を付けられた事が原因だと思ったのだ。
彼はもうどうしようもなく、「湖の底から何かを持ち帰ればこの呪いを解くことができる」と考え、意図せず一石三鳥の離れ業をやってのける。
ラスト、彼らを「呪い」から解いたモノがタクシーの上に乗っけられている。
それはお守りとなり、彼らの前途に潜む「呪い」を威嚇し続けるのだ。
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全編に渡り重苦しさと息苦しさが漂い、赤と青と黒の配色(今回からは紫も加わりました)にも垣間見える狂気が正に「らしい」と感じる映画。
主演でも映画でもしっかりと爪痕を残す、ライアン・ゴズリングというジャンルを生み出している。