「愛は劣勢」愛を語れば変態ですか U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
愛は劣勢
笑った。
笑うつもりなんてなかったのに、笑えた。
ラブテロリストとでも言おうか、主人公に翻弄…なんて生易しいもんじゃない。降伏とか追随とか…蹂躙されてる旦那様の心情が、同情しつつも理解でき、興味深いし面白い。
まるで「相手への愛情」を人質にされてるようであり、現代における契約の内訳を解説されてるようでもある。
なにせ、旦那とかいう立場だから巻き込まれていかざるをえず、妻を手放さないというか諦めない。
その原動力が自身の愛情なのかどうなのかは、きっと本人しか分からない。もしくは、本人にも分からない。
主人公、あさこの台詞がいちいち深く…w
表題も劇中の台詞である。
こじつけで押し通す部分はあるものの、その中にキラリと光る真理のようなものがあり荒唐無稽で突き抜けたキャラを現世に留められたような感じがする。いや、天使であるキューピットが覚醒したのかもしれない…。
更には、この、こじつけの部分も秀逸であり、ストーカーを通して語られる独善的な愛の形には、閉口するものの、それに近い事を皆様、目にしたり、耳にしたりしてると思う。
観ながらに思うのは、世のモラリスト達への反旗であり解剖であり、「愛」という不確かなものへの挑戦でもあった。
凄い哲学的なテーマでありながら、それを俗世に堕とすというか、自分の理解出来る範囲の事象として再考できるようになってる。
秀逸な脚本であり、とんでもない娯楽作品である。
そもそも、愛とLOVEは別物である。
あさこが発するのがLOVEであり
旦那が発するのが愛なのだ。
両者は異なるものでありながら日本では「愛」と一括りにされてたりもする。
それぞれの映画館でなぜあそこまで予告がヘビーローテーションされてるのかよく分かった。
制作が松竹だからかと思ったが、そうじゃなかった。
観てほしいんだ、松竹が。
こんな面白い作品仕上がりましたと、声高らかに宣誓してたわけだ。
是非、愛に迷える"アナタ"に観てほしい。
一切合切抱え込んで…自ら突き進むしかないのである。
名作です。