「天皇は高貴?」日本のいちばん長い日 mg599さんの映画レビュー(感想・評価)
天皇は高貴?
原田眞人監督の渾身の作、とは思うが、疑問な点もなくはない。
もう一度見直さないといけないが、岡本喜八版はまさに1日の話であったと記憶している。
陸軍の反乱分子が、昭和天皇が吹き込んだ玉音放送の録音版を必死に探すのを、機転を利かせて守りきるという描写があった。
今回の原田眞人版にはそういうのもない。
阿南惟幾(役所広司)、鈴木貫太郎(山﨑努)、昭和天皇(本木雅弘)、この三者のありようを描きたかったと、原田眞人は言っているわけだが、それなら「日本のいちばん長い日」というタイトルは返上してほしかった。
まず聖断があって、そこからのドラマに徹してほしかった。
本木雅弘には感心した。我々日本人には好むと好まざるとに関わらず、皇室というものが刷り込まれている。玉音放送もいろいろなメディアで幾度となく聞いている。
人間天皇なのだが、どうしたわけか、本木雅弘はある種高貴なオーラをまとっているのだ。東条英機が諌言に赴いたときの昭和天皇の毅然とした態度には、なぜか襟を正さなければ、という気分にさせられた。
この人が聖断を下したのだ。逆らえる理由がない。
反乱の首謀者畑中(松坂桃李)がまったく愚鈍なヤツに見え、彼の言にはまったくの理もない。
そこは映画としては、決定的な欠点となる。
松坂桃李は熱演だったが、相手が悪かった。
原田眞人が昭和史を映画にするとき、それは違うだろうと立ち上がる映画人がいたが、若松孝二はもういない。
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