「思ったよりも、素晴らしい出来。今こそ日本に平和を」日本のいちばん長い日 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
思ったよりも、素晴らしい出来。今こそ日本に平和を
第二次大戦の終結に至るまでの、鈴木貫太郎内閣発足から、ポツダム宣言受諾決定の昭和天皇のご聖断、宮城事件までを描いた作品。
思ったよりも、上手く出来ています。
個人的に懸念していた本木雅弘の昭和天皇ですが、意外に良かったです。TV映像などで耳にする、独特のイントネーションも意識して取り組んだようですしね。本木本人の上品な感じが上手くマッチしたことと、昭和天皇が当時44歳、今の本木雅弘が49歳とほぼ同年代と言う事も、良かった要因ではないかと思います。
役所広司や山崎努などの実力派俳優も、その実力を十分に発揮しています。って言うか、年齢のことを言えば、鈴木貫太郎が77歳で山崎努が78歳、阿南惟幾が58歳で役所広司が59歳と、ほぼ同年代の俳優を配置したのが良かったんですかね。
それで気になったのが、阿南惟幾・鈴木貫太郎・昭和天皇と並ぶ重要人物・畑中健二を演じた松坂桃李。松坂桃李が演じた畑中健二は、陸軍少佐で軍事課員だったわけですが、当時33歳なんですよね。それを26歳の松坂桃李が演じるのは、ちょっと・・・。若すぎる。30歳くらいでいい俳優居なかったのかな。そこがちょっと残念なポイント。
その代わりと言ってはなんですが、同じ軍事課員の井田中佐が印象に残ったかな。陸軍省の玄関ホールで、阿南に決起を迫る鬼気迫った表情が物凄く印象的でした。狂気とは違うんですよね。決意というか、信念というか、純粋さと言うか、そう言う感じだなと思いました。
この作品での登場人物の描かれ方には、原作者の思いも入っているのではないかという気がしました。阿南はかなり好意的に描かれていると思いますが、神風特別攻撃隊の創始者として知られている軍令部次長の大西瀧治郎は全く逆。彼と遭遇した阿南が発する言葉に、原作者の半藤一利が大西瀧治郎をどう思っているのかが現れていたような気がしました。
それとこの作品を見て判ったのが、戦争は始めるよりも終わらすほうが遥かに難しいということ。近年も、アメリカがイラクで苦労していますしね。
英語のタイトルは『The Emperor in August』。なるほど。