劇場公開日 2015年3月21日

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「WAMということならばクリスマスソング」神々のたそがれ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0WAMということならばクリスマスソング

2015年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

難解というイメージの共産国のしかもSF映画だが、しかし所謂VFXやCGを用いたエンターティンメントな表現方法とは真逆の、リアリティ溢れる作品と感じる内容である。
とはいえ、記録映画的な演出、そして全編を通しての達観的で皮肉溢れる雰囲気はハリウッド映画との逆ベクトルとしての面白さをもたらしてくれる。
以前に観た『パフューム』を思い起こさせる、中世期ヨーロッパの市井のインフラをこれでもかと叩き掛けてくる説得力に目眩がしてくる。しかも三時間という現在映画では長丁場で…
汚泥、血、糞尿、体液、食品、動植物、昆虫、ありとあらゆる個体から吐き出す嘔吐と吐瀉。これ程の汚い描写をこれでもかと見せつける映画は今まで観たことがない。
しかしその人間の人間たる根源みたいなモノを表現するにはこれ以上にない描写であるのも事実である。
強烈な印象と紛う事なき本性、そしてアイロニーと諦観。何度も人間は同じ過ちを繰り返し、そしてバターになる…
決して希望も誇りもない世界。厭世を自覚するには充分過ぎる程の内容である。
ソプラノサックスのような楽器、そしてダウンジャケットのような甲冑、少ないギミックだからこそ強烈な印象がこの映画はSFなんだと思わせる。
もし、未来から、又はテクノロジーが発達した星から来た者が今の地球に訪れた場合、この野蛮な星をどう思うのだろうか…
とにかく今観るべきは未成年なのだろう。

※WAMはウェット&メッシーの略

いぱねま