「早く風呂に入りたい!」神々のたそがれ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
早く風呂に入りたい!
スクリーンを埋め尽くすかのような、人物、動物(もしくはその屍肉、食用なのか多くは吊るされている。)、用途のよく分からない道具。道具と言えば、どのシーンにも次々と風変わりでいて古風なデザインの小道具が映し出される。
絶えず降り続く雨、そのためにあらゆる地面がぬかるみ、室内も湿り気と泥汚れに満ち満ちている。
侮蔑の言葉と暴力の交換こそがコミュニケーションだと言わんばかりに、人々は絶えず罵り合い、痛め付けあう。そして糞尿があたりかまわずまきちらかされる。
中世を思わせるその世界は、ヨーロッパや東アジアの歴史が近世を迎えることがなかったとしたら、このような世の中が来ていたかも知れない様相だ。
ときおりカメラに目線を送る人物がいる。
この瞬間、観客はこの世界の中に存在している人間として、映画の中で起きている出来事を傍観しているかのような感覚にとらわれる。
これこそがヴァーチャル・リアリティと呼べるものではないだろうか。そう呼ぶに相応しい濃密な情報量がこのスクリーンには映し出されている。そして、延々と続く雨と湿気と臭気にうんざりさせられ、いつ果てるとも分からない世を呪いたくなる。
なんだかよく分からないのだけれどとにかくすごいなぁと感じるという意味では、ピカソのゲルニカやシュバルの理想宮のようだ。
鑑賞後、温かい風呂に浸かり、さっぱりとしたいと生理的に欲求したのは、私だけではあるまい。
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