「パーフェクトな作品」おんなのこきらい 透るさんの映画レビュー(感想・評価)
パーフェクトな作品
森川葵ちゃんはGOTのデナーリスちゃんに似ている。
この映画すごく好きだ。
タイトルやモデルが主演ということ、実在のポップバンドのミュージカル的出演などの演出でサブカル的立ち位置だととられそうだけど、実は本筋がとても洗練されていて物語としてのクオリティがすごく高いと思う。
自分がかわいいことをわかっていて、それを隠そうともしないキリコに
はじめ反感を覚えるだろう。
でも観終わるころにはすっかりキリコのファンになっている。
この子がかわいくてかわいくてしょうがなくなる。このかわいさには、きっと本人は気づいていない。
自分がかわいいはずなのに、それをわかっているのに
1番好きな人には振り向いてもらえない虚無とプライド。
そのどちらもが爆発して、残ったものを拾い集めながらゆらゆら歩いていく。
「おんなのこ」じゃなきゃ知覚できない感情と経験しないストレスがある。
心底そんな「おんなのこ」な部分が「きらい」なんだけど、おんなのこじゃなければ映画にならない・題材にならない。そんな濃密さはおんなのこにしかない。
爆発前のキリコは華奢で華やかで、柔和だけどその実高すぎるほどのプライドで周囲を圧倒する。私が何かしなくても、世界が勝手に回ってくれるからそれに乗ってあげているだけ。そんなスタンス。
爆発後のキリコは小さくて儚くて、まるで小動物みたい。少し傷ついたようなアンニュイな表情だけど、なぜか満ち足りているような気がする。以前のように受け流すのではなく、回る世界に乗り遅れて、必死にしがみつこうとする様にようやく人間味を感じる。きっとようやく身の丈に合った自分を見つけて、自分で自分の生き方を切り開かないといけないのだと知ったのだと思う。私が特別なわけじゃなかった、みんな必死だったのに気づかなかっただけなのだと。
主人公の変化を演じた森川葵ちゃんは怪物だと思う。この人のキリコでなければこの物語は成り立たない。鮮烈で痛々しいほどの演技だった。