「かわいいというアイデンティティ」おんなのこきらい おちゃのこさんの映画レビュー(感想・評価)
かわいいというアイデンティティ
人は様々な自分を持っている。
会社で働く社会的な自分、友達と笑い合う自分、家で気を抜いている自分…数えきれない程、場面に応じたそれぞれの自分。
全て同じ自分でありながら、全てが違う自分といっても過言ではない。自分でもわからなくなるくらい、自分というものは多様だ。
むしろ他者のほうが自分について知っているのではないか、と稀に思う。が、それは本当か?それはあくまでも他者からみた自分であり、完全なる「俯瞰」とは少し逸れるのではないだろうか。
もっと楽に、もっと自然体に、と他人に助言するのが良いこととされている風潮があるような気がするのだが、常々それについて疑問に思っていた。他人のいう「自然」は時に自分にとっての「不自然」であるからだ。
また、「自然」でいることについて、誰しもが楽になったり居心地の良さを感じるとは限らない。他人のいう「自然」がすっぴんだったとしても、化粧をした自分こそが「自然」な自分と感じる人だっているはずだ。
この映画の主人公にとっても、かわいくぶりっ子であることが「自然」であり、彼女のアイデンティティなのだと思う。
それが恋愛において優勢に立てる方法ではないことなんて気付いているだろう。しょーもない男しか引っかからず、挙げ句の果てに遊びで終わるような関係しか築けないことに気付いてしまった。でもそれが自分だ。
ラストの彼女の清々しいぶりっ子に安心した。また、好きな人に会いにいく前、服装や髪型こそナチュラルテイストだけど、鏡の前でぶりっ子な表情を隠しきれていないシーンがよかった。
所々出てくる主題歌担当?のアーティストのシーンはこの映画の安っぽさを際立たせている気がして、要らないかな…。もったいない。でも良作。