「消してぇぇぇぇぇ〜リライフしてぇぇぇぇぇ〜!! 100万回くらい観たようなベタな内容だが、役者良ければすべて良し😊」Re:LIFE リライフ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
消してぇぇぇぇぇ〜リライフしてぇぇぇぇぇ〜!! 100万回くらい観たようなベタな内容だが、役者良ければすべて良し😊
客員教授として地方の大学に赴任した落ち目の脚本家が、生徒たちとの触れ合いを通して尊厳を取り戻してゆく様を描いたロマンティック・コメディ。
主人公、キース・マイケルズを演じるのは『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズや『ラブ・アクチュアリー』の、名優ヒュー・グラント。
マイケルズが赴任するビンガムトン大学の学科長、ハロルド・ラーナーを演じるのは『スパイダーマン』シリーズや『セッション』の、オスカー俳優J・K・シモンズ。
“カーセックスの…“じゃなかった、“ロマコメの帝王“ことヒュー・グラントによる中年再生物語。ほぼドキュメンタリーである。
監督/脚本のマーク・ローレンスはヒュー・グラントの主演映画を多く手掛けている人物のようだ。よほどウマが合うのか、この2人のコラボレーションは『トゥー・ウィークス・ノーティス』(2002)、『ラブソングができるまで』(2007)、『噂のモーガン夫妻』(2009)に続き今回で4作目。グラントがのびのびと演技している様に感じられたのは、監督と気心の知れた仲だったからなのかも知れない。
ちなみに、ローレンス監督の母校は本作の舞台となっているビンガムトン大学である。「雨が多い」だの「ど田舎」だの「今すぐここから逃げろ」だのと散々なディスりっぷりだが、それも全て愛校心があるからこそなのだろう。
母校を舞台にした映画に、戦友であるグラントを起用し、しかも主人公を自分と同じ脚本家に設定するとは。ローレンス監督が本作に並々ならぬ情熱を注いだのであろう事は想像に難くない。
とはいえ、内容は超ベタ。中年凸凹カップルによるロマコメというだけでもベタなのに、さらにそこに『スクール・オブ・ロック』(2003)的なダメオヤジ先生ものもミックス。ベタ×ベタでデジャヴ度MAXな、よく言えば安心感のある、悪く言えば「何で今更こんなベタなもんみなきゃなんねーんだよケッ」な映画である。
脚本家が主人公の作品だが、この映画自体の脚本はあんまり出来が良くない。
マイケルズの受け持つ11人の教え子たちにはそれぞれストーリーがある様なのだが、各自のエピソードにちょこちょこっと触れるだけで別に深掘りはされない。恋人(セフレ?)のカレンも『スター・ウォーズ』オタクのビリーも、追求すればそれだけで1本の映画になりそうなバックボーンを持っているにも拘らず割とサラッと流されてしまうので物足りなさが残ってしまうし、クラス一の秀才クレムに至っては、全然その背景が描かれていないのでプロの脚本家デビューが決まったところで感慨も何もない。
テレビドラマであれば大人数のキャラクターを扱った学園ものも良いかも知れないが、こと映画となるとそうはいかない。あの人もこの人も大事、という描き方をしてしまうと全体の印象が散漫になってしまう。『天使にラブソングを2』(1993)のローリン・ヒルの様に、焦点を当てる生徒は1人に絞るのが正解なのだと思う。
端的に言って本作の生徒たちは、マイケルズが自分を見つめ直す契機として作用する単なる道具である。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)の様に、生徒と教師が一対一の関係になりお互いの信頼を深めていく方が映画的だと思うのだが、本作の主体はロマコメなので本気で教育論を描こうとはしていない。そのため、マイケルズが教壇に立つ姿が最後までおままごとにしか見えなかった。
ロマコメも教師ものも、両方やろうとした事がまた本作の散漫さに拍車をかけている。ロマコメに集中したいのであれば、むしろ完全に「教師と生徒の絆」みたいな学園ドラマ要素はバッサリ切ってしまうのもありだったのではないだろうか。
ただ、その肝心のロマコメもあまり上手く行っているとは言えない。
一応本作の恋愛はマイケルズとヒロインであるホリー、マイケルズの恋人カレン、ホリーの恋人ジェリーの四角関係にあるのだが、カレンはただのトラブルの引き金という役割に過ぎず、ジェリーに至っては会話にのみ登場する実体のないキャラクターであるため、恋愛の駆け引き的な面白みはない。
ついでに言うと、街で唯一の観光名所である全米最古の回転木馬が1回しか登場しないというのはちょっと勿体無い。とっても良いロケーションなのだから、クライマックスでここを使ったロマンティックな山場があると嬉しかったかも。
脚本のネジが緩い一方で、キャスティングはガチガチのガチ。主役のヒュー・グラントを支えるのは、マリサ・トメイ、J・K・シモンズ、アリソン・ジャネイというオスカー俳優陣。とにかくメインキャストに演技派が揃っているので、そのやり取りを見ているだけで満足感は高い。
ちなみに、今やシモンズの代表作となった音楽パワハラ映画『セッション』(2014)は本作と同年に公開されている。性格的に全く真逆の教師をこうも見事に演じ分けるとは…。前々から思っていたが、やはりシモンズは今のハリウッドで1番演技が上手いオッさんかもしれない。
本作を一言で表すと「ヌルい」。
ただ、それは裏を返せば鯱張らずに鑑賞できるという事であり、この様な王道ロマコメにおいて、それは何よりも重要なのだとも言える。既定路線にそって進む超絶ベタな内容も、まぁこのジャンルなら許せる。こういう映画で奇抜な事やられてもねぇ…。
映画は観たいが脳みそを使いたくはない。そういう疲れた大人に本作は最適。難しい事は考えず、一流俳優陣のアンサンブルをぼんやりと楽しみましょう😊
※本作の原題は『The Rewrite』。…邦題をつけた配給会社の人〜間違えてますよ〜。
時期的に考えて、テレビアニメ化もされた人気漫画『ReLIFE』(2013-2018)にあやかったのだろうが、今となってはなんの事やらよくわからん。
この漫画、後に『ReLIFE リライフ』(2017)という本作とほぼ同じタイトルで実写映画されてしまった。変な邦題つけるからこういうややこしい事になるんだぞ!やっつけ仕事をしたバカは少しくらい反省しろっ!🫵

