「何よりも映画として見てほしい作品。」ハン・ゴンジュ 17歳の涙 onjuさんの映画レビュー(感想・評価)
何よりも映画として見てほしい作品。
この作品は実話を基にした映像作品であって、ノンフィクションではない。
痛ましい実話をもとにしているということはあまりにもわかりきったことで、そのことに忠実であるというだけでは映画としての存在意義は弱い。
しかし事件自体に対しても大いに雄弁でなければならないという意思が感じられ、この映画を見た者が事件の悲痛さに驚きや憤り、哀惜の念をあらたにすべきことも意図してはいる。
けれどもこの作品に施された伏線、事件を離れて創作されているフイクションの部分に注目したとき、ただ興味本位に事件を再確認することの無意味さ、無力さ、無神経さを理解したうえで乗り越えようという意思を感じる。
映画のタイトルは「ハンゴンジュ」であり、コンジュとは公主、王女のことになる。
抗うことのできない現実を、ただ受け入れるしかなかった人間としてではなく、そんな現実の中ですら魅力的でかけがえのない日常の輝きを放つ「人生の主人公。」
見終わったときに残るものはおぞましい人間性への嫌悪でも、現実への諦めでもない。
ただそれでも生きてほしい、生きたいという、悲痛で切実な心の渇きではないだろうか。
この映画を見終えた後、いつまでも繰り返し響き続けるコンジュの歌声を感じたすべての人には、単なる他人ごとではない生きることへの渇望が宿る。
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